11月14日(土)~15日(日)に行われたシニア女性映画祭・大阪2015へ行ってきました。今年で4回目の映画祭です。今回は「特集 ウーマン・リブ45周年 “今も、私たちはリブ!”」と銘打って、2日間で全7作品のドキュメンタリー映画を上映。「-70代が語るリブ45年-果てしなくリブロードはつづく」という特別企画トーク(トップ写真)や、作品上映後のトーク、大阪でのリブ運動を紹介する企画展示やリブ45周年祝賀パーティ-などもあり、とても盛りだくさんの映画祭でした。

スペインとトルコで1970年代後半から80年代にかけて広がった、フェミニストたちの運動を記録した2作品(『そして多くの女たちが…―バルセロナのLa Sal-』『女たちの反逆-トルコの女性解放運動』)、カナダで1970年代の女性解放運動から生まれたラディカル・レズビアンたちの運動を、当事者たちへのインタビューを中心に振り返った1作品(『レズビアナ-もうひとつの革命-』)は、本邦初上映!他にも、同じく70年代に生まれた日本のウーマン・リブ運動に関わった女性たちに、若い世代からの関心を率直にぶつけた『ルッキング・フォー・フミコ』、リブ運動に関わり、今もリブを生きる12名の当時の思いを集めた『30年のシスターフッド-70年代ウーマン・リブの女たち-』の2本も上映されました。

同時期に世界各地で生まれた、さまざまな女性運動の〈広がり〉と、女性たち一人ひとりが声を上げ、自ら主体的に運動に関わることで生まれた〈連帯の力〉を、活き活きとした実感をもって追体験できたのは、当事者たちの声を丁寧に拾った、志ある女性監督たちによるドキュメンタリーだからこそと思いました。問題や困難は違っても、どこか生きづらさを感じながら今を生きるわたしたちにも希望をもらえる、それぞれ、とても見ごたえのある作品ばかりでした。

作品の中でわたしの興味を引いたのは、『そして多くの女たちが…―バルセロナのLa Sal-』の中で、一人の女性が語った言葉です。「〈フェミニズム〉はわたしにとって居心地の悪い行動主義」だと言った彼女は、その理由を「だって、ミサイル(例えばそういった類の、他の社会運動)はベッドに持って帰らないけど、常に”あなたがどう生きるのか”を問うフェミニズムは、そうはいかないでしょ」と。そうそう!と、とても共感できたキーワードでした。もう1つは『レズビアナ-もうひとつの革命-』の中で、ある女性が語った「わたしたちは同質性をよりどころにしてつながるのではなく、異質性を認め合ってつながることが大事なのだと思う」という言葉。「異質性」をベースに他者とつながることは、特に同質性を尊重しがちな日本において、なかなか実現しがたいような気もするのですが、今のさまざまな活動や運動にも置き換えて、その大切さが理解できるように思いました。(下記写真は展示の様子。会場に並べられたミニコミ誌『女から女たちへ』)

当時のメディアや社会が取り上げなかった、あるいは正当に評価してこなかった女性たちの声は、今回の作品群のような、地道な記録の積み重ねと発信がなければ存在しなかったことになります。まさに、消されてしまいそうな女性たちの声に耳を傾けた作品として『沖縄戦の記憶「沖縄戦の少女たち」』『ビルマに消えた慰安婦たち-1997年5月~1998年9月現地調査の記録』の2作品も上映されました。『ビルマに消えた慰安婦たち』では、上映後に監督の森川万智子さんによるトークも。福岡から駆けつけてくださった森川さんには、この映画を撮るきっかけになった韓国の女性(文玉珠さん)との出会いや、撮影のエピソードなどを伺いました。(詳しくは彼女の著書『文玉珠(ムン・オクチュ) ビルマ戦線楯師団の「慰安婦」だった私』(2015年新装増補版、梨の木舎。第16回山川菊栄賞受賞)をぜひお読みください!)一人の女性との出会いに触発され、それを行動に変えて記録し言葉を紡いできた森川さんに、わたしも刺激(とサインも→下記写真( `ー´)ノ)をいただきました。

文玉珠(ムン・オクチュ)―ビルマ戦線 楯師団の「慰安婦」だった私 (教科書に書かれなかった戦争)

著者:森川 万智子

梨の木舎( 2015-05 )

刺激と言えば、各作品もそうですが上映後のトーク(先述の森川さん、『レズビアナ-もうひとつの革命』での若林苗子さん)や特別企画トーク(舟本恵美さん、佐伯洋子さん、吉清一江さん、山上千恵子さん。司会:三木草子さん)、この映画祭で出会ったたくさんのスタッフ・参加者の皆さまにも、わたしは2日間、楽しく前向きな刺激を受けっぱなしでした。2日目の午後、『レズビアナ-もうひとつの革命』の上映時には、昨年度の本映画祭で『百合祭』を上映した浜野佐知監督が応援に駆けつけてくださり、会場を大いに沸かせてくれました。こうした、リブを生きる女性たちのネットワークや支え合いがあって映画祭ができていることに、わたしはとても感慨深い気持ちになりました。(写真下:若林苗子さん、浜野佐知監督)

わたし自身は1970年生まれ。まさにリブが生まれた年に生まれ、リブを知らずに育ち、リブを知ってからもどこか、距離を感じてきた世代の一人です。「リブって何?」という疑問に対して、これまで何となくスッキリしない気持ちでいたのですが、この映画祭でその答えがまた少し、分かったような気がしました。

さて、来年の映画祭がどんなテーマで、どんなラインアップになるのか、今から楽しみです。改めて、2日間で出会った皆さまへの感謝の気持ちを込めて、また次回も参加できるのを楽しみにしています。今回ご参加になれなかった皆さまも、このレポートでは伝えきれない映画祭の空気を感じに、ぜひ次回はお出かけください!(写真下は、14日のリブ45周年祝賀パーティの様子と、映画祭を終えてホッとした表情の皆さま)(中村奈津子)