エッセイ

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不公平な調停委員!どうしたらいいか【打越さく良の離婚ガイド】NO.2-3(12)

2012.08.18 Sat

【打越さく良の離婚ガイド】NO.2-3(12)不公平な調停委員どうしたらいいか

12 調停委員が夫の話ばかり信用して,私をはなから軽んじているような気がしてなりません。不公平な調停委員を交代させてもらえないでしょうか。

◎ 調停委員は公平中立であるべきですが…

前回も書いた通り,調停委員は当事者双方に公平中立であることが求められます。

実際には,調停委員も人間ですから,いろいろな価値観や考えを持っています。でも,自分の考えを自明視されては困ります。たとえば,調停委員が,「(夫でなく)妻が家事を専らするのが当然だ」という考えを持っている場合に,「妻が家事をおろそかにした」という夫側の言い分に肩入れして妻を非難したりしたら,妻に「この調停委員は不公平だ」と信用されなくなりますよね。

あるいは,「乳幼児の養育は(父親より)母親に任せたほうがいい」といった考えを持っている調停委員が,「子どもを育てたい」という父親に事情も聴かずに一刀両断に「お母さんに任せたほうが無難でしょう」と言ってしまったら,これまた父親から不信感を持たれても仕方ありません。残念ながら未だに時々耳にするのは,ドメスティック・バイオレンス(DV)を軽視されたということ。「暴力は,『たったの』それだけですか?それくらいの暴力はまあよくあることでしょう」とDVの被害を軽視してしまっては,被害者は委縮してしまいますし,調停委員に事情を説明することすら諦め,不本意な解決案に応じてしまうかもしれません。

調停委員には,自分の価値観や考えを批判的に捉え直して,当事者それぞれの考えに耳を傾けてほしいものですよね。そうでなければ,到底,当事者間の合意形成を促し,適正な解決に導くことなどできません。

◎ 調停委員には研修が実施されています

各地の家庭裁判所は,調停委員に対して,調停として果たすべき役割の習得や,当事者双方の話をよく聞いたうえで公平中立の立場から助言するという基本的な姿勢の周知を図るため,研修を実施しています。

また、地方によっては調停委員自身が講師を呼んで講義を聴いたり、読書会をしたり、ロールプレイなどを通して、自己研鑽につとめているところもあります。

◎ まずは要望を

調停委員の扱いがあまりに不適切で公平性に欠けるという場合には,どうしたらいいでしょうか。

代理人がついているなら代理人と相談して代理人から調停委員に注意を促していただいてはいかがでしょうか。代理人をつけていない場合には,面と向かって調停委員にクレームを言ったら,「ますます不公平な扱いをされるのでは」と臆してしまうかもしれませんね。

そんなとき(あるいはあえて担当裁判官にも知ってほしいとき)は,調停期日の後にでも,裁判所に連絡して(ファックス,手紙,電話),善処をお願いしたい旨要望してはいかがでしょうか。それでも逆効果を心配してしまうかもしれませんが,私の経験上は,要望後は,調停委員の対応ががらりと改善することばかりでした。

どうしても調停委員が信用できず交替してほしいと思う場合には,裁判所にその旨要望してもいいでしょう。しかし,どのような事情によるのか,詳細を説明した上で,裁判所に理解を求めなければならないでしょう。その上で裁判所が確かにそれは酷いと判断しなければ,交替は難しいと思われます。まずは,交替ではなく上記のような要望で改善が期待できないか,検討してみてください。

◎ 忌避の制度はない

なお,家事審判法には調停委員につき除斥(当事者と一定の関係にあるときに手続の公正さを保つためにその職務執行から当然排除する),忌避(除斥事由には該当しないが手続の公正を保つために申立てに基づいてその職務執行から排除する)が規定されていませんでした。

来年1月施行の家事事件手続法(16条)では,調停委員についても,除斥制度が規定されました(たとえば,調停委員が当事者の一方の血族の場合には,その調停を担当できません)。しかし,家事事件手続法でも,当事者が調停委員を信任しないときは,調停に合意しないこともできること等が考慮され,家事調停員に忌避制度は導入されませんでした。

カテゴリー:打越さく良の離婚ガイド

タグ:非婚・結婚・離婚 / くらし・生活 / 弁護士 / フェミニズム,家族,離婚, 打越さく良,エッセイ,離婚ガイド,親権

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