LGBT理解増進法案として、自民党・公明党案、立憲民主党・共産党・社民党案(=旧超党派議連案)、維新・国民民主党案の3本が提出され、自民党・公明党が維新・国民民主党案を取り込んだ4党修正法案が6月9日に衆議院内閣委員会、13日に衆議院本会議で可決されました。
4党修正法案に「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう留意」という文言が入ったことで、マイノリティの権利保障に向けたはずの法律がマジョリティの権利尊重を謳うことになってしまっています。学校における教育・啓発・相談体制の整備についても、「家庭及び地域住民その他の関係者の協力」を得るという条件が付記されたことで、性的マイノリティへの理解増進が抑制的に運用される懸念があります。
以前よりSNSを中心に不安を煽るような言説が広がっていましたが、LGBT理解増進法の成立が迫るなか、事態は一層深刻になっています。例えば、LGBT理解増進法ができると「身体的には男性の人が『心は女性』と言えば女性風呂に入れるようになる、それを拒めば差別だとされるので拒否できない」などという発言が頻出しています。このような事実誤認や偏見が広がることで、 モラルパニックが起き、その結果、トランスジェンダーへの憎悪がますます強まっていることを懸念します。
女性の安全がトランスジェンダーの権利擁護によって脅かされるかのような言説は、トランスジェンダーの生命や健康にとって極めて危険なものになりかねません。実際にトランスジェンダー当事者への殺害予告が寄せられる事態にまで発展しています。また、性別違和を抱える子どもたちに居場所を提供する活動に困難が生じています。
わたしたちはフェミニストとして、女性の不安を煽る言説が拡散している状況を深く憂慮し、フェミニストのあいだでもそのような動きがあることを懸念します。女性の安全と権利を求めてきたフェミニズムは、シス女性だけの安全を求めるものではありません。言うまでもなく、トイレや公衆浴場はだれにとっても安全であるべきです。女性の安全が十分に守られていない現状が問題であり、性暴力被害者への支援や性暴力を防ぐための法整備が強く求められます。
この声明は、4党修正法案が成立しかねない緊迫した状況のなか、LGBTQ+への攻撃が止むことを願い発出するものです。ジェンダーに基づく差別のない包摂的な社会の実現に向け、フェミニストとしてトランスジェンダーへの差別、偏見、憎悪をなくす動きに連帯し、今後いっそうの対話の機会を設けていきたいと願っています。
呼びかけ人(五十音順、2023.6.13.時点)
浅倉むつ子、荒木菜穂、池田啓子、伊田久美子、井田奈穂、上野千鶴子、長志珠絵、太田啓子、大森順子、岡野八代、 河野和代、北仲千里、清末愛砂、杉田真衣、内藤忍、中谷文美、中野麻美、東優子、福田和子、古久保さくら、三浦まり、三成美保
(参考資料)
4党修正案の問題点については、三成美保さんの記事をご参照ください。
自認する性別に従った施設利用の可否について、必要性・合理性をどのように判断するかは以下の文献をご参照ください。
立石結夏・河本みま乃「男女別施設・サービスとトランスジェンダーをめぐる問題」WEB評論日本 (2021.4.6.)
2021年度 関東弁護士会連合会シンポジウム「性別違和・性別不合があっても安心して暮らせる社会をつくる ―人権保障のため私たち一人ひとりが何をすべきか―」
スポーツとトランスジェンダーに関しては、來田享子さんの記事をご参照ください。
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