
書 名 農家女性の戦後史―日本農業新聞「女の階段」の五十年
著 者 姉歯 暁
刊行日 2018年8月
出版社 こぶし書房
定 価 本体2200円+税
丸岡秀子さんと「女の階段」
この本を手にした時、すぐに丸岡秀子さんを思い出した。長野県佐久の出身で、戦前から農村女性問題を研究、戦後は女性の平和運動に取り組みながら、一貫して「農村の女性自身が自分を解放する」ことを訴え続けた方である。
この本の舞台とは1967年日本農業新聞の「くらし面」に新設された「女の階段」という投書欄で、1976年に<全国「女の階段」読者の集い>が開催されて以来、2018年に第16回を迎えた現在まで、途切れることなく続いてきた「女たちの発信」の場だが、丸岡秀子さんはずっとこの活動を応援・指導し、最初の集いには講師として招かれている。
わたしたちが長野県に「らいてうの家」をオープンした時、「信州ではらいてうさんより丸岡さんのほうが有名」と言われ、「らいてうは雲の上の人、丸岡さんは地べたに下りてきた人」と比較されたこともあった。
しかしらいてうは丸岡さんを深く信頼し、国際会議の代表に招かれたとき「自分は行けないが、丸岡さんを」と推薦している。このとき丸岡さんが「らいてう先生の代わりはできないが、丸岡を行かせよというなら行きます」と答えたエピソードがある。二人に共通していたのは「女が自分で考え、学び、自分の意見をもって行動する」という精神だった。丸岡さんが遺した「読むこと 書くこと 行うこと」という言葉は、今故郷臼田町の記念碑に刻まれている。その精神が脈々と育ち続けてきた、そのあかしが「女の階段」50年のあゆみなのである。
農村女性にとっての「政治問題」
著者の姉歯さんは、戦後新憲法のもとでも日本の農村には「家制度」が生き続け、「農家の嫁」は一方で営農の主力を担いながら、子育ても保障されず自分名義の預金通帳さえ持てなかった状況をリアルにとらえる一方で、「その不条理さがどこから来るか」を分析し、「女の階段」がその不条理さに挑むよりどころになった過程を追っている。各章に挿入されている女性たちのインタビューが圧巻。同時にそれをたんに「哀史」「古い昔の話」としてではなく、現代の問題とむすびつけるところが姉歯さんの視点である。
ここでは、農地改革に始まる日本の農業政策そのものが、ほんとうに農業を守り発展させる方向ではなく、農薬公害から減反政策,農産物輸入自由化、GATやWTOに至る国際的な圧力のなかで日本農業の解体を引き起こしている(それはまさに今進行中!)現実のなかで再生産されてきたことへの怒りを込めた告発がある。
目次には、「戦後直後の反税闘争、強制供出反対闘争」「公害による環境破壊と暮らしの破壊」「農産物輸入自由化」「衰退する農業」そして「原発問題」「農家女性を追い詰める『日本型福祉社会』」といったテーマが並び、「女性問題」というより「政治問題」を論じているように見えるが、じつはその「政治問題」こそ日本の農村女性の「解放」を阻んでいる最大の問題であり、だから農村の女たちは「闘い」に立ち上がらなければならなかった、そこに女性「解放」の課題があったということがわかる。
「女たちが行動する」意味を問う
「女の階段」に投稿するにも「夫の許可」を得てから書き、それでも投稿しつづけたという証言、姑に「百姓の嫁が本など見ていてこの身上継げるか」となじられ、「野良でお茶休みのとき本を読んだ」という述懐、そこから発見される「丸岡秀子さんが教えた『行動』とは、仕事もやり、家族を守ることだけでなく、農家を苦しめ、自分たちの生活を脅かしているものは何か、その根源を知り、行動することまで含めてなのだ」という自覚…。
ここにたどり着く「女たちの自立」の思想を、姉歯さんは深い共感を持って描き出している。平塚らいてうもまたルソーの言葉を引いて「生きるとは行動することである。ただ呼吸することではない」と言ったそうだが、その意味でこの本は、先ごろトークセッションで話題になった『<化外>のフェミニズム―岩手麗ら舎読書会のおなごたち』(柳原恵)にも通じるものがあると思う。「フェミニズムという用語を使わないフェミニズム」の可能性を提示する1冊だった。
■よねださよこ
女性史研究家、らいてうの家館長
小林・米田共編『平塚らいてう評論集』(岩波文庫)(共編)、
『女たちが戦争に向き合うとき―わたし・記憶・平和の選択』(へいわの灯火ブックレット)
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