高市さんが首相になって、テレビでよくその顔を見るようになって1年近くになります。どうもその笑い方が気になってしかたがありません。むっつり怖い顔をしているより、にこやかに微笑んでいる方がいいに決まっています。でもその笑い方が、何かいいことがあってうれしくてにっこり微笑むというようなものではないから気持ちが悪いのです。

 人が笑うのは、普通は、うれしいとき、楽しいとき、面白いことに出会ったときでしょう。そうではない笑いが高市さんにはとても多いのです。記者会見のような大勢の人に向かって話すときでも、だれかと向かい合って話しているときでも、普通ならこんなところで笑顔は見せないのにと思うところでよく笑い顔を見せます。自分に余裕があるという自信を見せたいのかもしれません。逆に自信がないことを隠すための笑いかもしれません。ちょっと上目遣いで媚びるような笑顔をみせるときもあります。男社会の自民党で長年苦労してきて身についた表情かもしれません。そう思うと、少し気の毒な気もしますが。

 相手との話し合いで、目が細くなり口元が緩んで笑い顔になるのは、何か話が弾んで、うれしい、面白い、いいことがあったときでしょう。それは相手との相互作用の結果ですから、そういう時は相手も笑っているはずです。それが高市さんだけ笑っている…。だから、気持ちが悪いのです。

 日本語学の文体論などで著書の多い中村明・早稲田大学名誉教授の最新著書『91歳 日本語学者 大いに笑う』(草土社)では笑いの種類を大変細かく述べています。

 一般社会では、初対面の折ににこやかに迎え入れる。[…]なごやかな雰囲気をつくるのに笑顔は欠かせない。相手の機嫌をとるための愛想笑いは、度を超すと、へつらっているように受けとられかねない。
 意図せずに自然に浮かぶ笑顔も多い。人前でほめられて面映ゆい場合にも笑みをたたえる人が多いし、照れかくしの笑いもある、ほんとの気持ちをあいまいな笑顔でごまかす場合もあり、余裕を示す笑みもある。(pp.11-12)

 こんなにいろいろな笑いがあるのですから、いちいち高市さんをとがめるなと言われそうです。でも、やはりその場にそぐわない笑いは困ります。

     毎日新聞2026年9月24日

 最近の高市さんの笑いでいちばん気になったのは、高市さんがニューヨークの国連総会に出席した合間を縫って開かれたトランプ米大統領との首脳会談の写真でした。トランプ大統領が真剣な目つきで高市さんを正視しているのに対して、高市さんは斜め下から大統領を見上げて目を細めて笑っています。これでは一国の代表として対等な話し合いに臨んでいるとは見えません。こちらには真剣に話すつもりも力もありませんと、最初から投げてしまっている「相手の機嫌を取るための愛想笑い」としか見えません。

     東京新聞2026年9月24日

 もうひとつ、これは国連総会で演説している写真です。ここで首相は「日本は平和国家として、いかなる紛争の解決においても法の支配を重視してきました。それは、日本が、ICJ(国際司法裁判所)、ICC(国際刑事裁判所)、ITLOS(国際海洋法裁判所)などの様々な国際裁判所を一貫して支持し、判事を輩出していることにも表れています」と言いながら、現在まさにトランプ大統領が法を無視して理不尽なICC制裁を声高に叫んでいることについては何も言いませんでした。日本が輩出した赤根智子判事の苦境を救おうとすることばは一言も出てこなかった。脱炭素化を進める取り組みを通じて、世界の気候変動対策に貢献していくと決意も述べていましたが、そうした演説の中での笑いは何を意味するのでしょうか。この笑顔はその決意をあいまいにしてしまっています。上に引用した中村教授の「あいまいな笑顔でごまかす」笑いではないでしょうか。少なくとも、一国を代表して国の政策や方針を世界の人々に訴え、賛同を得ようとする場面で笑顔は必要ではありません。笑いはむしろ避けるべきです。その他の多くの代表の演説の写真を見ればわかります。誰も笑ってはいませんから。

 ここまでわたしは首相の笑顔を否定的に述べてきました。笑顔はいいじゃない?場面を明るくするし和やかにする、何がいけないの?と言われそうです。本当の笑いだったら大歓迎です。でも、大統領に媚びるような笑いや、主張をあいまいにするような笑いは困ります。

 高市さん批判のために言っているのではないことは次のミニ調査からもわかっていただけると思います。首相の笑いが多くて気になるにしても、それは単なる思い込みかもしれませんし、錯覚しているのかもしれません。そこで、近所の図書館へ行って新聞で調べてみました。朝日・東京・毎日・読売の4新聞のこの半月の記事中の写真で政治家たちが笑っているかどうかです。日米首脳会談と米中首脳会談の時期でしたので、トランプ大統領、習近平国家主席、高市首相が何度も出てきます。この3人についてと、それ以外の新聞登場者の写真を拾い上げて、笑っている顔とそうでない顔の比率を出してみました。

         写真数   笑い顔    非笑い顔      笑い顔比率
トランプ     56     9      47       16.1%
習近平     39    14      25       35.9%
高市早苗    33    27       6       81.8%
それ以外の人 175    27     148       15.4%

 習主席の笑い顔の写真比率がトランプ大統領の写真比率の2倍以上にもなっているのは、今回の訪米で主席が異例ともいわれた大統領の厚いもてなしを受ける側だったことが影響していると思われます。高市首相の8割以上というのは想像以上ですごいです。写真を載せる側の選択にも問題はあるかもしれませんが、実際に首相が笑っている場面が多いからこうなっているのでしょう。3人以外の新聞登場者は延べ人数で175人、笑い顔の比率は約15%で、トランプ大統領の比率と近いものでした。

 錯覚でも偏見でもなく、やはり高市首相の笑い顔がダントツに多かった。これらの笑いが、中村教授の「相手の機嫌を取るための愛想笑い」や、「度を超すと、へつらっているように受けとられかねない」笑いや、「ほんとの気持ちをあいまいな笑顔でごまかす」笑いでないことを切に望んでいます。首相の国会審議への出席時間が今までの首相よりずっと少ないという数字も出ています。笑い事ではありません。笑っていないで真面目に真剣に国会審議に参加されることを強く強く願います。