「本音を言えば、友だちになりたいです」。このタイトルは三年前、トークイベントで初めてふたりが出会った後に、紗倉さんが向坂さんに送ったDMの一文だそうです。この出会いを見逃したくない、でも相手に負担をかけたくない、という配慮がにじんだ呼びかけに対して、向坂さんは「まずはLINE友だちからでいいでしょうか」と返したとか。
集団や連帯が苦手だというふたりの、最初はぎこちなく始まった関係は、ふたりで一冊の本を読んで語り合う、という読書会を重ねるなかで、大きく変化していきます。
最初の読書会でふたりが選んだ課題図書は、上野千鶴子さんと鈴木涼美さんの『往復書簡 限界から始まる』(幻冬舎文庫)。ここで出会った「ウィークネス・フォビア(弱さ嫌悪)」と他者への信頼の問題は、往復書簡の最後まで通底していきます。
その後もふたりの身近で切実な体験を交えながら、一つの疑問が次の疑問を呼び寄せるようにして、往復書簡のテーマは広がっていきました。「ひとり」に対する社会の圧、許せない相手との向き合い方、性的・職業的差別との闘い、性欲と暴力の問題、そして女性として「書く」ことの意味……。
ふたりがここで行ったのは、「あまりに大切なことなのに見過ごされ、軽視され、あたかもなかったかのように土を被せられ踏み固められてしまったような事柄」(本書より)を、ふたりで再発見し、とことん本音で語り合うこと。
ふたりの文章はカジュアルな言葉ながらも容赦のない率直さで、いま私たちが抱える様々な課題の核心に迫っていきます。
本書はそうした苛烈な真剣勝負を経て、ふたりの女性が互いへの深い信頼をはぐくみ、唯一無二の「友だち」になっていく過程を描いた、感動的なルポルタージュでもあります。
「言葉」を通して心の底に隠されてきた傷をみつめ、相手の傷をも引き受けていく。そんな新しい関係性の希望を示してくれる一冊です。

◆書誌データ
書名 :本音を言えば、友だちになりたいです――ふたりのための往復書簡
著者 :向坂くじら、紗倉まな
頁数 :272頁
刊行日:2026/09/29
出版社:講談社
定価 :2090円(税込)