
女性たちの批評の言葉を、いまにつなぐ
女性がひとりで旅に出ること。写真を撮り、社会について語ること。それらは、どのような自由を切り拓き、同時にどのような制約を抱えてきたのでしょうか。
『連帯する美術批評』は、1970〜80年代の日本と世界の写真文化を、フェミニズムと国境を越える視点から読み直す一冊です。きりとりめでる、久後香純、中村公彦の三人が、それぞれの研究や関心を持ち寄りました。
久後香純は、雑誌『anan』とディスカバー・ジャパンの広告を手がかりに、「女性の一人旅」が広がった時代を検討します。そこにあった解放への希望と、白人女性を理想とする価値観が併存していたことを問い直します。きりとりめでるは、富山妙子、富岡多惠子、宮迫千鶴による写真と旅をめぐる思索をたどります。中村公彦は、日系三世のアーティスト、トミエ・アライの実践から、戦争や移民の記憶が太平洋を越えてつながる様子を描きます。
本書では、三人の書き下ろし論考とともに、過去の批評も収録しました。上野千鶴子の「女性誌ニュージャーナリズムの同世代史」、富岡多惠子の写真批評、富山妙子の旅と制作をめぐる文章、そしてルーシー・R・リパードの論考「包括的交流」の本邦初訳です。かつて書かれた言葉を、現在の問いとともに読み直せる構成になっています。
書名に掲げた「連帯」は、本のつくり方にも通じています。異なる関心を持つ三人が、互いの視点を持ち寄り、過去の実践に学びながら批評を深めていく。その試みを、美術や写真の専門読者だけでなく、女性たちの表現やフェミニズムの歴史に関心を持つ方々にも読んでいただければ幸いです。
『連帯する美術批評―1970–80年代の日本と世界の写真をめぐる トランスナショナル/フェミニズムの視点』
著者:きりとりめでる、久後香純、中村公彦
発行:アートダイバー/2026年10月刊
定価:2,750円(税込)/162ページ/日英バイリンガル
ISBN:978-4-908122-35-4
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