国会も会期末になってから副首都構想だの、国会議員の定数削減だのと、議論を呼ぶ重要案件が目白押しで出てきた。高市政権としては連立与党を組む維新との約束であり、公約だから、是が非でも実現しなければならない、という。
 公明党が離脱した後、党内でも孤立した高市早苗首相に救いの手を差し伸べたのは維新である。どたんばになって、それまでの合意事項にはなかった議員定数1割定数削減を連立政権合意書に盛り込み、優先事項にしてきたのには、こう来たか、とうなった。それも比例代表制限定で。 野党に転じた公明党を追い落とすには、これ以上ないかっこうの手だからだ。
 議員定数削減は2012年に「身を切る改革」の名で当時の野田佳彦首相と野党だった自民党総裁、安倍晋三氏とのあいだで「約束」したものだった。政権復帰したあとの安倍首相はさっさと約束を反故にし、それから定数削減を口にする者はいなくなった。「身を切る改革」なら、政党交付金の削減や企業献金の禁止をやればいいし、何より裏金問題を解決する必要があるのに、そちらにはいっこうに手をつける気配がない。
 衆議院議員の定数は465人、うち小選挙区選出が289人、比例代表選出が176人。ここから法案に書かれた45人を差し引くと131人となる。小選挙区と比例代表の割合は半々でもよいくらいなのに、いちじるしくバランスを欠くことになる。「1選挙区1人」の小選挙区制は、わずかな差でもトップをとった候補者が総取りしていくシステムで、死票が多く、民意を反映しにくいことはつとに指摘されている。
1994年、時の日本新党代表、細川護熙氏を首班にした非自民連立政権で、小選挙区比例代表並立制を成立させた。そのときには欧米のように政権交替が可能な二大政党制を実現するにふさわしい理想的な選挙制度だと、多くの政治学者がこぞって推進派にまわった。
 あれから30年余。佐々木毅、蒲嶋郁夫氏などの政治学者は事後的にふりかえってそうはならなかったことを認める。当時推進する立場にあった政治家の河野洋平氏はまちがっていたかも、と反省の弁を述べる。日本には代替可能な二大政党はついに実現せず、自民一強に対して少数多党が乱立する構図となった。小選挙区制は、政権与党に圧倒的に有利なのだ。
 それに対して、比例代表制は少数野党の声を反映しやすい選挙制度である。それを削減すれば少数者の声はかき消される。女性もマイノリティも当選しにくくなる。国民の多様な声を聞くことがむずかしくなるだろう。というより、多様な声に聞く耳を持たないのが、現政権かもしれない。
 今、わたしたちは女性のあいだで「議員定数削減反対!緊急アクション」を企画している。放っておくわけにいかないからだ。ほんとうは定数削減に反対するだけでなく、小選挙区制の廃止や、議席の一定数を女性に割り当てるえ「クオータ制」、「一票の格差」の是正、ひとりで複数の候補に投票できる連記投票制など、民主主義を機能させるためにはさまざまな選択肢がある。そもそも代表制民主主義そのものが制約の多い制度なのに、その代表性をさらに掘り崩すような今回の定数削減に賛成するわけにはいかない。  うかうかしていると、有権者であるわたしたちの権利はどんどん削り取られていく。あとになってしまった、と思っても遅いのだ。

(京都新聞2026年8月23日付け朝刊1面コラム「天眼」から許可を得て転載)

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10月6日(火)17時〜19時(開場16時30分) 参議院議員会館講堂はこちら https://wan.or.jp/article/show/12635