
本書は、一橋大学大学院社会学研究科ジェンダー社会科学総合センターの通年プロジェクト、先端課題研究14「ジェンダー研究の過去・現在・未来―女性学・ジェンダー研究のパイオニアに対する聞き取り調査を中心に」の成果を書籍化したものである。本書に収められているインタビュー調査は、2014年から2016年にかけて行ったものであるが、インタビューの準備に際しては各グループで何か月もかけて勉強会を行い、質問項目を吟味し、「厚い記述」を目指してきた。
このプロジェクトに参加した多くの院生が大学院に入学した時には「女性学」や「ジェンダー研究」は社会科学の研究分野の一つとしてすでに確立されており、一般社会においても「ジェンダー」の語は人口に膾炙したものとなっていた。それは当然ながらパイオニアの奮闘の功績である一方で、本書の「はじめに」で描かれているように、「ジェンダー研究はエスタブリッシュメント」と感じる学生の評価を生むようになった。そこにはパイオニア世代の経験とかい離するものがあるように感じる。本書では、このパイオニアの奮闘の軌跡を後発世代のジェンダー研究者が聞き取ることによって、ジェンダー研究とはどこから誕生し、何を目指すものであるのかを問い直し、ジェンダー研究の現在、そして未来に向けたあり方を模索する手がかりを得ようとした。
インタビュー対象者を決めるにあたっては、学術的に「パイオニア」を定義することよりも、インタビューを行う各々の、「私」にとってのパイオニアであることを重視した。そのためインタビュー対象者の選定は、プロジェクトに参加した院生の研究分野に左右されておりよるものであり、時間的な制限も加わってあるため、偏りもあるだろうかと思われる。本プロジェクトが、私たち後発世代が 多くのパイオニアの積み上げてきたジェンダー研究を継承するための一助になれば幸いである。
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