芸術 ちいさかったわたしといまちいさいあなたへ贈る本棚 ひこ・田中の、 子どもの本イチオシ
まほうつかいのトビィ
2011.08.26 Fri
まほうつかいのトビィ
訳者など:カズノ コハラ ()
出版社:光村教育図書
この作家の版画はその線の表情にすばらしさがあります。微細なわけでも、奔放な勢いがあるわけでもなく、とにかく優しい。が、それだけではなく、どう伝えたいかに神経が注がれています。 たとえば、まだ子どもの魔法使いであるトビィのマントは大きくて、手は袖の中にあるのですが、袖の中の手が、空を飛ぶための箒の柄を握るその力加減までが判ります。 単純に、巧いと言えばいいだけの話かもしれないですが、それだけではなんだかもったいないようなクリアな表現です。 なかなか空を飛べないトビィはドラゴンと出会い、飛び方を教えてもらうのですが、やっぱり飛べない。 そんなとき、ドラゴン倒しのナイトがやってきます。 ドラゴンを助けなくちゃ! という筋運びは、大きなドラマがあるというより、素直なものですが、決して力の行使や、暴力に頼らず、収まるところに収まる心地よさに浸らせてくれます。 本当に良い作家です。
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