2011.09.12 Mon
アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.本書は、フランス国民から最も愛され信頼されているユダヤ系女性政治家、シモーヌ・ヴェーユの回想録の全訳です。
両親と兄をショアで奪われながらも、ショアの地獄を生き抜きぬいた一人の女性の希有な人生が簡潔な筆致で語られています。
しかし同時に彼女の人生は、高等教育を受け、戦後新たに女性にも開かれた司法官養成制度を利用して、自らキャリアを切り開いていったという意味で、同時代の自立を目指した女性たちの歩んだ人生とも重なります。
日本ではヴェーユはもっぱら中絶の自由化を実現した女性政治家として知られていますが、この回想録は、そうしたフェミニストの側面だけでなく、激動の20世紀のフランス、そしてヨーロッパと運命をともにしたまれに見るスケールの大きな女性政治家の全貌を描き出しています。
ショアをヴェーユは「人間性の剥奪のプロセス」と呼びますが、このショアの経験と切り離せない三つの重要なテーマが彼女の人生を貫いています。 一つは歴史の真実と記憶の問題、二つ目は欧州統合への情熱、三つ目が人間の尊厳の回復のための闘い、とりわけ女性の人権や自由の擁護です。
アウシュビッツの悲劇を背負い、死者たちとつながりながら、踏みにじられた人間の尊厳の回復と正義の実現への強い意志を持ち、二度とあのようなことのおきない平和な世界の構築のために情熱的に生きてきた女性の半生は、私たちに深い感銘と感動、そして勇気を与えてくれます。 ぜひお読みください。(訳者:石田久仁子)
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