乳がんという診断を受け、今後の治療、手術の方針を聞くために、細胞診を受けたマニラの日系クリニックで、外科医の先生の予約を取った。
今まで、検査は一人で行っていたが、この日は土曜日だったこともあり、夫も一緒に来てくれた。
待合室で先生を待つ、私と夫はたいそう深刻な顔をしていただろう。
そこに、まるで宇宙飛行士のような顔全体を覆うフェイスシールドをかぶった、外科医バレンシア先生が、30分ほど遅刻して現れた。(※当時のマニラでは、室内外でマスク+フェイスシールドが義務だった。)
ちなみにフィリピンでは30分以内の遅刻は、遅刻のうちに入らない場合がほとんど、ということを10年のマニラ生活で学んだ。
診察室では、アシスタントの方になにやら冗談を飛ばしながら、バレンシア先生はガハガハと笑っていた。
フェイスシールドの下でも分かる、フィリピン人らしい明るい雰囲気。長髪を後ろでくくっている姿は、アメリカ西海岸のロックミュージシャンのようでもあった。
日本の医療ドラマで、外科医=クールというイメージを持っていた私は、
そのイメージとはかなり違う、バレンシア先生を見て、
「この先生が手術をするのだろうか・・・」とかすかな不安がよぎった。
診察室に入り、バレンシア先生は私のカルテを見て、
「あ、同い年だね!僕も今年43。だんなさんは何歳?」と明るく話しかけてきた。
今思うと、私と夫の緊張と不安をほぐそうとしていたのかもしれない。
今後のステップについて話す時には、外科医らしい、キリっとした顔になり、
「細胞診が、いい結果でなかったのは分かりますよね。」と言った。
その後は淡々と乳がんの治療法、手術までのステップについて、
パンフレットやタブレット画面を使いながら、分かりやすい英語で説明してくれた。
「これからすぐにCTスキャンを受けて、転移があるかどうかを調べる必要があります。
もし転移があった場合は、手術をする前に、数か月間、抗がん剤治療を受けなくてはいけません。」
転移、抗がん剤治療・・・。
とりあえず、手術を受ければ治療が終わる、手術が終わってコロナも落ち着いたら、日本に帰れる、と思っていた私には、重すぎる言葉だった。
まだ転移があるとも、抗がん剤治療を受けるとも決まったわけではないのに、不安で心が押しつぶされそうになる。
泣きそうな顔の私の様子を見て、先生は「乳がんは治療すれば治る病気です。」と落ち着いた声で言い、そして私の目を見て、はっきりと力強く言った。
“Don’t worry,I’ll guide you.Let’s start journey.”
「心配しないでください。私があなたを案内します。一緒に旅を始めましょう。」
こんなスピリチュアルな言葉を、外科医の口から聞くのはとても意外だった。
まるで教会で、牧師さんから聞くような言葉のように感じた。
だが、その言葉は私の心に一筋の光を照らした。
直観的に、この先生は信頼できる、この先生に任せよう、と思ったのだ。
日本で医師をしている友人に話したら、「日本の医師からは聞けない言葉だね」と言った。
たいていの日本の医師は、治療に関係ないことは口にしない。
忙しすぎて、治療に関することすら、十分に説明していない場合もあるらしい。
私も日本の病院で、医師のピリピリした雰囲気が怖い、と思ったことが何度かある。
私の友人を含め、日本の医師はたいてい、目が回るほどの忙しさで働いている。
医者も人間なのだから、強いストレスを抱え込んだら、患者にも伝わるほどの、負のエネルギーを発することもあるだろう。
私が学ぶ「エネルギー・サイエンス」では、物質的な身体の周りに、活力を司るエネルギー体、感情を司るエネルギー体、思考を司るエネルギー体が取り囲んでいると考える。
負の感情に満ちた人の近くにいると、感情エネルギー体でそれを受け取る。
ネガティブ思考の人の近くにいると、思考エネルギー体でそれを受け取る。
つまり、ネガティブな感情や思考はエネルギー体を通じて送受信される。
感情エネルギー体、思考エネルギー体において、こういった負のエネルギーで満ちた状態が続くと、いずれ物質的な身体に、病気となって現れてくる。
だから、健康のためには、負の感情や思考に満ちた人とは距離を置くことが大事だ。
ただでさえ、病院というのは不安や心配という負の感情が集まった場所だが、
担当の医者がイライラしていたり、強いストレスを感じていたりすると、さらに負の感情の影響を受けてしまう。
元気になるために病院に行っているのに、病院で医者に会うことにより、負のエネルギーを受け取ってしまっては元も子もない。
私の「エネルギー・サイエンス」の師Master Del Peは
現代医療の大きな問題の一つは、医師自身が健康ではない、ということだと言う。
健康には、物理的な身体だけでなく、感情面、思考面も含まれる。
健康になるためには、心身ともに健康な人から治療を受ける必要がある。
底抜けに明るく、ポジティブなバレンシア先生は、不安に満ちていた私には、とてもありがたい存在だった。
「この先生についていけば、きっと、なんとかなる。」と思わせてくれたのだ。
筆者紹介:星屋智(ほしやちえ)
ブログ:Heal your energy 心と体を整えるエネルギーヒーリング・エクササイズ・瞑想
2013年から、フィリピン・マニラ在住。現地でヨガインストラクター、オンライン日本語教師として活動。
2021年 乳がんと診断され、手術、治療。治療の過程でエネルギー・ヒーリングと出会う。
2022年 World institute for incurable diseases (WIID)認定エネルギー・ヒーリング アソシエートスペシャリストの資格を取得。
オンラインでエネルギー・ヒーリングのセッションを行っている。