退院から1週間後、採取したがん細胞の分析結果とそれをもとにした今後の治療方針を聞きに、腫瘍内科医パトドゥ先生のところへ行った。
一口に乳がんといっても、実は様々な種類(サブタイプ)があり、「何によってがん細胞が増殖するか」で治療方針が分かれる。

私の乳がんは女性ホルモンによって増殖する、乳がんの中で最も多くみられるサブタイプだった。
パトドゥ先生は再発予防のために、飲み薬のホルモン剤と分子標的薬に加えて、卵巣機能を抑制する治療が必要だと説明し、その方法として、3つの選択肢を示した。

1.卵巣機能を抑制する注射(4週に1回)
2.卵巣への放射線照射
3.卵巣切除手術

選択肢の中に「卵巣切除」が入っていることに、強いショックを受けた。
ついこの前、左胸を全摘したばかりなのに、また手術?
問題のない卵巣まで切り取るの?

乳がんの治療が手術だけで終わらないことは分かっていたつもりだったが、
治療方針を聞いて、底なし沼に落とされた気分になった。

茫然自失となっている私を見て、パトドゥ先生は
「3つのうち、どの選択肢で治療を始めるかは、今日決めなくていいですから。」と言ってくれた。

私は「外科医のバレンシア先生に相談してから、決めます。」と答えるのがやっとだった。

バレンシア先生に相談したところ、
「まだ手術したばかりだから、すぐ次の手術を受けるのは良くない。 少なくとも3か月は体力回復に専念してください。」と言われた。
卵巣切除手術について、しばらく考えなくていい、と分かり、ほっとした。

そして、私の薬物治療は卵巣機能を抑制する注射から始まった。
太い針の、お腹に打つ注射を見て、少ししり込みしたが、
パトドゥ先生はこの注射に慣れているようで、さしたる痛みもなく、一瞬で終わった。
「なんだ、これなら、簡単だな」と思ったが、甘かった。

注射を打った翌日、身体、特に下腹部が重くて、立ち上がることができなかった。お腹を抱え、一日中、ずっと横になったままで「がん治療は甘くない」ことを実感したのだった。

それから数日後、がんの骨転移対策の点滴の予約が入っていた。

当時のマニラでのPCR検査の様子

当時(2022年1月)は、点滴を受ける病棟に入るには、3日以内のPCR検査の陰性証明が必須だった。
その頃、コロナ変異株オミクロンがフィリピンでも猛威を振るっていた。

PCRを受けに病院に行く日、嫌な予感がしていた。
鼻水が出て、喉が少し痛く、風邪のような症状があった。
そして、夫は私よりも症状が重いようで、熱を出して、寝込んでいた。

体調が優れない中、なんとか向かった病院で受けたPCRの結果は「陽性」。
コロナに感染していた。

覚悟はしていたが、愕然とした。
コロナに感染した場合、2週間の自宅隔離、家から一歩も出られないのが、 当時のマニラのルールだった。

乳ガンの手術を受けたばかりで、体力もまだ弱っている。
骨に転移があると診断されているのに、2週間は自宅隔離で病院で治療を受けられない。
頼りの夫は熱を出して寝込んでいる。

どうして、私がこんな目に合うんだろう。
無意識に「私の人生、もう最悪だ・・・」とつぶやいていた。

ちょうどそんな時、久しぶりに私にメッセージをくれた人がいた。
以前、私が教えていたヨガスタジオの創立者のディナだ。

ディナは米系IT企業でトップ営業として活躍した後、ITベンチャーを起業。その後、ヨガにハマり、ヨガスタジオを設立し、マニラ最大のヨガスタジオチェーンに成長させた。
私を含め、数多くのヨガ講師を厳しくも暖かく育成してきた、マニラのヨガ界のゴッドマザー的存在だった。

マニラのヨガ界の「ゴッドマザー」ディナ

ディナのヨガスタジオの様子(パンデミック前)


だが、パンデミックによって、マニラ全てのヨガスタジオが営業停止に追い込まれて以降、ディナはマニラを離れ、フィリピン・ルソン島の山岳地方に引っ越していた。
ここ1年ほど、ディナとは連絡を取っていなかった。

ディナが引っ越した山岳地帯。エネルギー・ヒーリングの師Master Del Peが建設した村があり、後に私も何度も訪問する。


メッセージには「エネルギー・ヒーリングに興味がある?エネルギー・ヒーリングの認定ヒーラー・トレイナー講座が始まるんだけど、やってみない?」と書いてあった。

エネルギー・ヒーリングがどんなものか、全く分からなかったが、 私が認定ヒーラーの講座を受けられる状態にないことは明白だった。

ディナに返信した。
「ヒーラーになるよりも、今は私自身にヒーリングが必要だと思う。 乳がんの手術を受けたばかりで、コロナにも感染した。」

すぐにディナから返事が来た。
「ガン治療の経験豊富なヒーラーを紹介するから、まず彼女のコンサルテーションを受けて。最初のコンサルテーションは無料だから。」

人生のどん底で出会ったのが「エネルギー・ヒーリング」だった。

今になって振り返ると、最適なタイミングの出会いだったと思う。

なぜなら、私は「スピリチュアル」なものが昔から苦手だった。
私自身はヨガ講師をしていて、瞑想も練習していたが、 何かしら「スピリチュアル」なものを商売にする人、そういうものに没頭している人は怪しいと感じ、距離をとった。

だから、このタイミングでなければ、「エネルギー・ヒーリング」という、 未だ現代科学で証明されていない、一般常識を超越したヒーリング手法に手を出そうとは思わなかっただろう。
だが、人生どん底にいた私は、何であろうと助けになるかもしれないものには「藁にもすがる思い」で頼りたい気持ちになっていた。
当時の私は、普段の「思考回路」が止まっていた。ショックのあまり、「常識」が吹っ飛んでいた。

「常識」というものは、役立つこともあれば、新しい学びを邪魔することもある、と私のエネルギー・ヒーリングの師Master Del Peはよく言う。

未だ科学で証明されていない事柄は数多くあるし、科学で証明されていないからといって、それが実在しない、とは限らない。
科学で証明されていないことであっても、多くの人が体験し、心身の健康に役立っている事例はある。「エネルギー・ヒーリング」もその一つだろう。
だが、たいていの人は科学で証明されていないこと、「常識」を超越したものは、なかなか受け入れられない。
だが、「常識」が吹っ飛んでいた私は、わけも分からず、「エネルギー・ヒーリング」に頼ってみようと思った。

人生最悪と思った時が私の転機だった。

筆者紹介:星屋智(ほしやちえ)
ブログ:Heal your energy 心と体を整えるエネルギーヒーリング・エクササイズ・瞑想
2013年から、フィリピン・マニラ在住。現地でヨガインストラクター、オンライン日本語教師として活動。
2021年 乳がんと診断され、手術、治療。治療の過程でエネルギー・ヒーリングと出会う。
2022年 World institute for incurable diseases (WIID)認定エネルギー・ヒーリング アソシエートスペシャリストの資格を取得。
オンラインでエネルギー・ヒーリングのセッションを行っている。