
『こんな世の中に誰がした?』というタイトルは『誰』に疑問符「?」をつけて人を探している。
仕事。結婚。教育。老後。ひとつひとつのテーマで答えがある参考書、と言いたいが内容は、上野さんが本質を露呈する問題の多いこの世の中のこと。
『わたしたちは今、「安心して弱者になれない社会」で生きています。失業して生活が苦しくても、結婚した夫に暴力をふるわれ「出ていけ!」と怒鳴られても、その人たちが救いを求めることを躊躇するような社会です。』(序章p.10)で始まる序章。
「そんなの自己責任でしょ?」「自分で決めたことなんだから自分で解決しなさいよ」と思っているあなたにも読んでほしい。年齢・性別を問わず届いてほしい。なぜなら、別々のひとりひとりが「別にわたしのことじゃないし」では変わらない問題だから。そして「生きづらさ」は「自己責任・自己決定」と言われるあなただけの問題では決してなく、誰がこの社会を、その問題をつくっているかを知ってほしいから。
現代日本という社会はどんな社会であるかを俯瞰してみて自分の身の回りに起きていること、身近な人がどんな人たちで構成されているかという視点を起こして一度じっくりながめてみる。
そこから自分の現在の状況を見つめ直したときに、なにか今までにはなかった変化を感じることはあるだろうか、ないだろうか。ささいな変化でも感じ方の違いでも気になったことがあったのならば、そこからはずっと、その思いが試金石となりこれからあなたが生きる世の中に影響を与える生き方が始まる。
人災のある社会で暮らしてきた。この本に答えがあるからではなくて、この本を選んだあなたが変える力をもっている。
まずはなにより、人が弱者のままで安心して生きられる社会に変化すること。はじめはちいさな差異であっても、拓いていく、拡がっていく。
変化を生き方に、生き方を変化に投影しつづける力は、どんなことも知ることから身についていく。
■堀 紀美子■
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