
文学がもつ「社会を変革する力」を信じ、現代日本の諸問題を半世紀前に予見していた女性作家がいた。
没後40年を経て再び大注目の有吉佐和子、その人と作品に迫る。
【出版社より】
女性の生き方、人種差別、老年期と介護者、環境汚染……等々、今日の世界に課されたいくつもの重大テーマに1970年代から言及していた作家が、有吉佐和子です。上野千鶴子先生が「私の介護学の原点」と語り、新装版が発売された『青い壺』が2025年上半期の〝文庫三冠〟を獲得するなど、いまなおその影響力と興味深さは色あせていません。
有吉の文学の根幹には、幼少期の異国育ちで培ったコスモポリタン的視点と、夏目漱石や有島武郎への傾倒、そしてキュリー夫人への憧れから養われた科学的観察眼がありました。そうして生まれた小説や劇作品は、いずれも個人の経験だけではなく、その背後にある時代や社会をも描き出すものです。膨大な資料や取材をもとに生み出された有吉文学は、ベストセラーとして長く生き続けるのみならず、様々な問題提起によって社会を変革し続けています。
「社会性の強いものは純文学ではない」と言われ、文学賞とは無縁ながらも、反骨精神と使命感によって文筆に命を懸けた53年の短い生涯。本書では、なかでも現代に通じるテーマにいちはやく触れていた五つの代表作を詳細に解説しました。それらの問題を現代的視点から考えるのは、今を生きる自分の生を深めていくことです。
【目次】
序章 ベストセラーは社会を変える
第一章 有吉佐和子・人と作品
第二章 『出雲の阿国』──芸能による魂の救済
第三章 『非色』──人間は差別なしに生きられない
第四章 『悪女について』──高度経済成長期の世相を象徴する女実業家
第五章 『恍惚の人』──少子化、高齢化、老人介護の担い手
第六章 『複合汚染』──食べたものが私になる
第七章 『有吉佐和子の中国レポート』──『複合汚染』後日談
終章 有吉佐和子の残したもの
文学がもつ「社会を変革する力」を信じ、現代日本の諸問題を半世紀前に予見していた女性作家がいた。
没後40年を経て再び大注目の有吉佐和子、その人と作品に迫る。
◆書誌データ
書名 :有吉佐和子と現代
著者 :川井万里子
頁数 :260頁
出版社:青灯社
刊行日:2025年12月20日
定価 :2750円(税込)
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