「ヤッタ!ヤッタ!ヤッター!……」
 2025年11月、職場一角にある休憩スペースで、自分のスマートフォンに届いたメールに感激しつつ、仕事中の同僚の邪魔にならないように小声で、しかし何度も繰り返し叫んだ。顔の両脇で両手拳の上下を繰り返しての、小さなガッツポーズ。顔を少し下向き加減にするも、口角が上がりっぱなしだ。頬に笑みがこぼれ出てくるのを、どうにも止めることができない。

 誠にありがたいことに、これまで何度か短歌で賞を頂戴した経験を持つ私だが、この日ばかりはその後仕事をしながら、内心盛り上がってしまった。今回応募した短歌はいずれも観察記録の歌、すなわち図書館にいる私以外の人や図書館周辺にいる動物などについて観察して歌にしたものだが、そのうちの1首が、司書さんの句歌会2025で最優秀賞を受賞したからだ。

 最優秀賞。
「絶え間なく泣く赤ちゃんよ将来は利用者としてお待ちしてます」

 館内に入ってくるなりずっと泣いている赤ちゃんに、心の中で微笑みながら語りかけた歌である。近い将来に、自分が読みたい絵本を選んで借りてもらえたらと思うと、今からわくわくする。

 私は現在、東京都S区の「図書館カウンターS」に司書として勤めている。S区の図書館カウンターは、図書館と違って本棚や閲覧席がなく、主に予約本の受取りと返却ができる、カウンターのみの図書館施設である。

続いて、優秀賞。
「児童らがプール帰りに窓口で身を乗り出して予約本待つ」

 プール道具を持っていたので、プール帰りにみんなで立ち寄ったことが分かった。これからお家でゆっくり読むのかな、みんな良い夏休みになりますようにと願いながら、まだかまだかと待っている様子の児童一人一人に、それぞれの予約本を渡していった。

 最後に、佳作。
「わあわあとわめく赤ちゃん予約本取ってくるからちょっと待ってね」

 お母さんが予約した本を取ってくる、その少しの間だけ、ご機嫌で待っていてくださいねと、赤ちゃんに手を合わせる思いを歌にした。

 司書さんの句歌会は、「図書館総合展」で年に一回開催され、原則事前に投稿する句歌会だ(ただし、会期中に会場での投稿は可)。成人の応募資格に制限はない。2023年に始まり三回目が終わっているが、私はこの間に二回投稿した。図書館や図書館に関係する世界にいる人が、図書館という存在や司書・図書館員の、悲劇喜劇その他思っていることを作品にして発表し、想いを共有して楽しむことを目標にした句歌会のため、文芸技巧はそっちのけに、撰者は内容への共感や驚きを評価軸として作品をみる。投稿者の職業属性や投稿先の部門に区分があり、それぞれ当てはまるものを選ぶ。投稿は、当日部門を除き、オンライン受付フォームのサイトから行う。一人六作品まで投稿でき、詞書として、歌や句を詠んだ状況などを、20字以上200字以内で説明した前書きを添える必要がある。所属先についてのキャッチコピーを付けることもできる。

 自分以外の方々の投稿作品について、 https://library.works/ の授賞発表から共感する内容が多かった。書架に戻す本は、誰かに選ばれて貸出期間中旅をして帰ってきた本であり、「返却本の背をなでて書架に納める」という投稿者には、本への深い思いやりを感じた。また、返却手続きをしたつもりが実はできていないという返却手続き漏れが恐いため、「二回返却手続きをした後に、さらに三回目の返却手続きをする」投稿者の気持ちが、私にはよく分かった。それ以外にも、仕事上参考になる作品が数多くあった。司書さんの句歌会2026への投稿募集は既に始まっており、2026年8月まで応募できる。

 私は司書さんの句歌会との出会いがきっかけで、仕事をしながら、自分自身を少し離れた距離から見つめることができるようになったと思う。そして、事あるごとに「ああ、これ、歌になるわ!」とくことが多くなった。アイデアが浮かぶとできるだけ速やかにスマートフォンにメモをして、帰宅後に歌にしたり句にしたりする。好きな短歌や俳句と仕事が結びつくことで、仕事がそれ以前よりも楽しくなった。今回は幼子の歌が並んだが、歌の登場人物全員には、感謝の気持ちでいっぱいである。これからも、職場で感じたことを都度言葉にすることで、その一瞬を自分の生きざまとして残していきたいと思う。

 2025年12月25日、クリスマス。
 早番勤務を終えて家に帰ると、図書館総合展事務局からの封書が届いていた。中を開けると金色に縁どられた表彰状が二枚、副賞と共に顔を出した。

 「Congratulations!!!」
 「好きなことをして、楽しんで、内面から輝け!!!」
そりに乗ったサンタクロースの微笑みながらの声が、空から響きわたったかのような錯覚を覚えた。