四六変形判、320ページ。定価2,420円 (本体2,200円+税)

「MIMOZA WAYS――わたしたちの道 1910-2020」京都公演の2日目、1月30日(金)14:00回に足を運んだ。コロナ禍のパリ・ドゴール空港から1990年代、1970年代、1910年代とテンポよく遡って、日本の女性の歴史をハイライトで振り返っていく。登場人物3人と狂言回し1人。パワフルな俳優たちの芝居あり、歌あり、踊りありの熱演に引き込まれ、115分ノンストップの舞台は、あっという間のタイムトラベルだった。

終演後、アフター・トークに登壇したゲストの山家悠平さん(研究者・小説家 青波杏)は、近代女性史の研究者らしく「青鞜の女性たちを、あの順番で紹介することは、女性史の専門家だったらまずない」と指摘。主催者側のリボアル堀井なみのさんが「これからもブラッシュアップしていきたいので、ぜひ詳しく教えてほしい」などと話した。そして山家さんは少し恥ずかしそうに「今日発売されたばかりの青波杏の最新作を5冊ばかり持ってきています。恐らくまだ書店には並んでいないと思うので、よかったら声を掛けてください」。
その奥ゆかしい態度に好感を持ち、ロビーで買い求めた最新刊のタイトルは「夜が明けたら」。脳裏に浮かんだのは浅川マキの名曲だったが、どうやらそれは正解だったようだ。

1970年代の初め、学生運動が退潮を迎える中で、仲間同士の集団リンチ殺人を引き起こした連合赤軍事件がモチーフ。その事件で親友を失ったジュンという女性が記した回想録のようなものの冒頭部分が、2024年の初夏、駆け出し編集者ルルの手元に託された。
ジュンが書いた作品は、途中からタイムリープして回想録からファンタジーに趣を変えるが、1年をかけてその舞台となった土地を訪ねるルルは、ジュンの書いた世界の住人に過ぎないと思われた人物たちに出会い、実在する場所の吸引力に幻惑されながら、成長していく。

「タラレバ」は夢物語に過ぎないかもしれない。けれども、ほぼ半世紀を隔てたジュンとルルの思考回路でたどる願いは、繊細だけど、どこか力強い。時間にかき消されそうになる一人ひとりの思いの断片をつなぎ合わせて、とどめる。もはや確かめようのない「そうであったかもしれない」思いは想像し、創造することでしか記すことができない。
ロビーで書いてもらったサインに添えられた言葉は「歴史の声がいまにひびくことをねがって。」――読後、それをもう一度目にして、研究者の山家悠平さんが、小説家・青波杏として表現したいと考えているものの正体が、ほんの少しわかったような気がした。口にしてはいけないかもしれないが、それは恐らく「希望」なのだ。(大田季子)

夜が明けたら

著者:青波 杏

KADOKAWA( 2026/01/30 )

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