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性暴力禁止法ネットワーク

2009.09.27 Sun

<p>性暴力禁止法ネットワーク</p>
<p>安藤由紀</p>
<p> 1年数ヵ月前から、性暴力禁止法を作るための有志が性暴力禁止法ネットワークを作っている。研究者、当事者、支援者などで月に1回勉強会を企画し、8月には渋谷ウィメンズプラザで緊急集会を行った。<br />
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 当日はマスコミと裁判関係者に向けて、対象事件のうち2割を占める性暴力犯罪の審理に裁判員裁判制度を適用する危険性や、今後の法案作りをアピールした。翌日の朝にはニュースで流れたようだ。<!–more–> <br />
裁判員候補者に被害者の個人特定情報が開示されてしまう可能性は、被害者にとっては非常なストレスと二次被害を与えかねない。裁判員選任手続きの途中で、慎重に守秘義務の徹底と被害者心理を研修する場が与えられなければ、今後、被害者が提訴することは激減するだろう。</p>
<p> 説明されてもなお、「なぜ、そんな時間に夜道を歩いていた」「そんな服装をしているからつけ込まれて当然だ」などの、市民感覚という名目の偏見が持ち込まれる可能性もある。過去にも被害者が風俗関係の仕事をしていたことを理由に、提訴しても関係者の人権意識が薄く、被害者がさらに傷ついた事件がいくつかある。</p>
<p> 交番に訴え出たとしても、性暴力被害者がどれほど苦痛を感じ、普通ではない状態で地面に立ち、言葉を発しているのか、理解できる人はそう多くない。警察官の訓練の中に、被害者心理と支援者であるための技術をぜひ必修にしてほしいと、テナーネットワークでは、カナダで出版された警察官や専門家のための「インタビューの技術」を翻訳して、全国の警察署に贈呈したりしてきた。</p>
<p> 被害者の様子が冷静に見えても、心の中では混乱と恐怖と、感情の麻痺に襲われている。しばらく時間がたつと急に泣き叫ぶこともあるし、体が震えたり、フラッシュバックに襲われて恐怖を再体験することもある。食事も喉を通らず、眠れない。人間が恐い。日常生活が崩壊した状態が周囲に理解されないために、人間関係も壊れ、大切な人や友人が去っていくこともある。</p>
<p> まったくの八方塞がりに、苦しさに耐えることでしか生きのびられなかった人は、過去にもたくさん存在しているだろう。そんな状態を改善するための法整備検討チームの提案を、以下に列挙する。</p>
<p>①性暴力被害者に24時間対応するレイプ・クライシス・センター、ワン・ストップ・センターの設置<br />
②被害者への医療、福祉、心理、法的措置をすみやかにサポートできる機関の設置<br />
③加害者の報復から被害者を守る対策の設定<br />
④捜査、公判時における被害者の安全対策の設定<br />
⑤立証において、被害者の性的経験、犯行当時の服装などを証明に持ち出さないというレイプ・シールドの設定<br />
⑥被害者が必要な法的なアドバイスなどを得るための弁護士を確保する手段の設定<br />
⑦裁判後や刑務所からの出所後における、加害者の報復から被害者を守る方法の設定</p>
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<p>法整備とともに、日常生活で暴力をどう防ぎ、自分の身をどう守るか、ライフスキルを得ることが大切になると思う。また、大人たちが性暴力を正確に理解するための啓発も、平行して重要になる。この春上梓した『女の子のセイフティブック』(童心社)もその一環である。3年間企画を温めた後、クーラーの効かない部屋でひと夏かけて夢中で製作した。15年間の暴力防止活動で、子どもに言えなかった細かい事柄のすべてを込めたつもりだ。<br class="clearall" /></p>
<p><a href="http://www2.ocn.ne.jp/~tener">http://www2.ocn.ne.jp/~tener</a></p>
<p>(財団法人日本性教育協会『現代性教育研究月報』2009年9月号より転載)</p>







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