アートの窓

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池田 朗子(アーティスト)〜「そのどっちでもない場所」を探す癖のようなモノがある〜

2009.06.28 Sun


写真左から:《their site/your sight》2005、《sightseeing》2007、《a princess on the soapdish》1999

※メッセージ、プロフィールは『続きを読む』をクリック!してください。「なにかとなにかの間」にいるとき、私は少し安心する。制作にしろ、コミュニケーションにしろ、日常の家事にしろ、「表層と深層の間」に「作業と作業の間」に留まってしまいたくなる。「なにか」と「なにか」を両極にとらえるところから、私の意識(認識、センス)は、既に自ら操作されて、中立ではないにもかかわらず、「そのどっちでもない場所」を探す癖のようなモノがあるように思う。

1999年に京都のお宿「吉水」で開催されたグループ展「当世物見遊山」の準備の頃、近親者が事故で突然亡くなった。同時期に予定していた、個展はアートスペース虹の熊谷さんにお許しをいただいて、キャンセルさせていただいたが、「当世物見遊山」展の作業は止めなかった。
「当世物見遊山」展は先に書いたように公園の中のお宿で行われ、お宿は通常営業を続ける中、作品を展示、観覧者を迎え入れ、宿泊者は作品と一緒に滞在するという企画だった。

当時の私は、学校という施設から、やっと離れ「日常」と「美術」の間で、自分はどう所在するのか?考えており、展覧会仕組みが自分の命題とぴったりな気がした。加えて、当たり前にいた身内が突然いなくなるという事実をとらえるために単純に繰り返し手を動かす事が、その時には必要だったのではないかと思う。

私は、石けんで小さな人形をいくつも彫り、各部屋、浴室、手洗いに設置する事にした。「どこからが作品で、どうなるとそうでなくなるか?」という事を知りたかった。「a princess on the soapdish」とお皿にシールのキャプションを貼った。お客がそれを使うたびに、作品のタイトルから離れ「石けん」に戻っていった。

この作品の記録は、現在、手元にあまりなく、むしろ見つけるのが しばらくの間、辛く思っていた。その後、2000年にロンドン留学中に大学内で、再制作し発表、学校という施設では京都の様に作品が機能しなかったが 反応は興味深かった。留学を終えた2002年に参加した、京都橘女子大学 「関西女性アーティストファイルvol.2」で、再制作、発表したときも88個の石けんを彫ったが、最終的には(WPAOのイベントで)人に配ってしまい手元にはお皿しか残っていない。最近、やっと整理を始めた記録から今回スナップ写真を見つけ、この機会に、この作品について書いてみたいと思った。

池田 朗子
いけだ あきこ

■ プロフィール
池田朗子/美術家。岐阜市出身、現在、大阪在住。
1997年 京都市立芸術大学大学院 美術研究科 彫刻専攻修了 2001年 チェルシー・カレッジ・アートアンドデザイン(ロンドン)MAコース修了。ロンドン留学中より、写真やビデオを使った作品の制作を始める。
2005 個展「They’ve still stuck on your wall 05」 (EN TANGSOGADE 4 UDSTILLING・デンマーク)、2006年 「目眩の装置」展(川崎市民ミュージアム) 、2007年 個展「sightseeing」(Algarden/スウェ竏茶fン)、 2008年 「日韓写真展:コミカル&シニカル」(パジュ・ブックシティー/韓国)他、国内外での個展・グループ展で発表。2008年には、初めての作品集『光景―their site/your sight』(青幻舎)を出版。

ちょこっとメモ1■
インスタレーションとは?

ちょこっとメモ2■
絵画は、キャンバスに絵の具(油絵の具やアクリル絵の具)、キャンバスではなく紙や布に岩絵の具と、色を平面にのせて行く。彫刻の場合は、空間に形や色を構成していく(あるいは形や色で構成したものを空間に設置する)。形を構成するのは、石や木、ブロンズなどが用いられることが多い。でも想像してみてください。同じ形でも素材が違えば、違って「見える」。例えば、駅前のタイトルが「希望」とかいう等身大の女性裸婦像が、高価な金属であるブロンズではなく、お菓子でできていたらどうだろう?ぺらぺらのベニヤ板でできていたらどうだろう?
池田さんの作品「a princess on the soapdish」の素材は石鹸です。日常生活に身近な素材なので「かわいい」感じもします。しかし、ユダヤ系にルーツを持つある人は、その人の形の石鹸を見て「ホロコーストで人々が殺された後石鹸にされた」という「話」を思い出したそうです。素材によって違う「見える」は、さらには文化背景によっても、違ってくきます。( 文:ほみし)

■もっと作品をみたい方は↓
http://ikedaakiko.net/

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