2012.02.21 Tue
アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください. 上野千鶴子さんと中西正司さんは、2003年、共著で『当事者主権』(岩波新書)を著した。それから5年、「当事者ニーズ」をおきざりにして制度と政策が進んでいるように見える。「ニーズ中心の福祉社会」とは文字通り、「当事者」の「ニーズ」を満たすことのできる福祉社会である。
誰のための、何のための福祉か?二人はその問いに真っ向から向き合いながら、ニーズ中心の福祉社会を、たんに理想として描くのではなく、取りこぼしのないよう綿密な調査に基づいて、この一冊を世に問うた。共著者それぞれの経験的研究と理論的探求の成果を散りばめて、わたしたちの未来を照らし、見えないものを見える領域に送り出し指し示してくれる。「当事者になる」ことは、みずからニーズの主体となり、社会がそれを満たす責任を要求するクレイム申し立て活動と不可分である。いまだ存在していないニーズを生成し顕在化させるプロセスは、「どういう社会がのぞましいか」という社会構想力をともなう創造的な過程である。それには、規範的・政治的な選択が関わってくる。「ニーズ中心」という本書の立場は、そのための理論的基礎を提供することを目的としている。
選択肢はある。それを選ぶかどうかは、あなた次第なのだと。
堀 紀美子
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