2009.09.29 Tue
なにより品のいい訳がいい。メイのノーブルさが、そのままに伝わってくる。「漫歩の果ての豊かに充実した果実」を味わい、1995年、83歳で亡くなった詩人・小説家メイ・サートンの25歳までの自伝。晩年、森の家で動物と木々に囲まれて書いた『独り居の日記』『今かくあれども』『夢みつつ植えよ』など内省的な作品の裏に、こんなにもいきいきと、自由な子ども時代が隠されていたとは。自律的だった母の、そのきっかけとなる幼い日の出来事。父をはじめ周辺のユニークな大人たちの姿が、見事な記憶力とともに活写される。亡命後のアメリカ・ボストンの学校シェイディ・ヒルでの創造的な実験教育を受け、10代のメイは女優への道を志す。挫折を繰り返しながらも、何度も不死鳥のように蘇り、新たな自分を見いだしていくメイ。敬愛するヴァージニア・ウルフとの出会いと別れで結ばれる最終章は、映画のラストシーンさながらの余韻を残すエンディングだ。(やぎ みね)
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