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「料理」から読む今市子 鈴木彩加
2009.11.26 Thu
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<p>絵本やエッセイなどに登場する食べ物に着目した矢野さんのエッセイを受け、「料理」に着目して私の大好きな今市子さんの漫画をいくつか紹介したいと思う。<br /> 今市子さんと言えばホラーとユーモアのバランスが絶妙な『百鬼夜行抄』が代表作として挙げられるが、BL作品も数多く出されている。そして今市子さんのBL作品には、食事や料理などの印象的なシーンが数多く登場するのである。私は20代になっても未だに食べ盛りな一方、下宿生活6年目にして初めて自分は料理がへたくそであることを実感した。<!–more–>もはや料理することが好きとか嫌いとかのレベルではなく、自分の作った料理は果てしなくまずいのだ。のびしろがあるとはいえ現状で料理がへたくそな私にとって、今市子さんの漫画で描かれる料理のシーンは「あぁ、こんなふうにサラサラと料理ができるようになったら毎日が楽しくなるかも」と憧れるものである。</p>
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<p>まずは『楽園まであともうちょっと』。借金取りの浅田と倒産寸前の旅行会社「楽園企画」の社長を突如引き受けることになってしまった川江の二人を中心にストーリーが展開していくこの作品で私が一番好きなのは、借金返済のために川江が夜逃げした屋台を四日間だけ借り受けてオリジナルレシピの料理を販売していくというシーン。「魅惑のどっこいしょサラダ」「イカのハレルヤ揚げ」「元気満点レインボークラッシュ」「誘惑タンゴでマーボー豆腐」など、居酒屋のメニューにあったら絶対注文してしまうであろうネーミングの料理が登場する。このシーンで面白いのは、これらの料理の作り手がちょっとした事情のために毎回異なり、本当はどんな料理なのかが全然わからないこと。読み手の想像力がかきたてられる、大好きなシーンだ。</p>
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<p>今市子さんが描く料理のシーンは、このように読者の笑いを誘う要素として用いられる一方で、トラブルを収拾する契機としても頻繁に描かれている。<br /> 『大人の問題』は、父親がゲイであることをカミングアウトしたために15年前に両親が離婚したという原嶋直人を主人公が、父親の再婚をきっかけにドタバタに巻き込まれていくという話。父親の再婚相手である海老悟郎は料理をすることでストレスを発散するという設定で、この作品においては登場人物たちの言い争いが起きたときや、問題が生じて行き詰っているときに、「だいたい人間ハラが減ってるとろくな事考えない」と海老が度々料理をして混乱した場を収拾している。</p>
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<p> さらに、料理がストーリーの展開に重要な役割を果たしているのは、『あしながおじさん達の行方』にも共通している。施設育ちの春日は、毎月手紙をくれて学費も援助してくれる五人の「あしながおじさん」を捜すうち、マンションの管理人である夏海と夏海の義理の息子である高校生の也寸尋と三人で暮らすことになった-という話。この作品では、春日と也寸尋の二人を軸に物語が展開していくのだが、二人が料理を通して徐々に心を通わせていくのが印象的だ。</p>
<p>「ヒューマン・ドラマ」「ヒューマニズム」と評されることがある今市子さんの作品。その評価の通り、どの作品でも優しくてほんわかとした読後感を得られるところが私は好きだ。料理のシーンが比較的多いというのも、日々の暮らしに欠くことのできない「食べること」を通じて、日常生活における人間関係や人の心の動きといったものを丁寧に描きたいといった趣旨があるのかもしれない。また、BL作品であることによって、「料理」というとどうしても付きまといがちな性別役割分業の問題もうまく回避されているように思う。<br /> 今市子さんの作品は、どの作品でも様々な伏線やサブストーリーがふんだんに盛り込まれており、漫画というより絵がメインの小説、といった感じがする。しかし一方で、漫画ならではの、漫画でしかできないような表現方法も用いられているために読み応えは充分だ。BLはちょっと…という人に是非手にとってもらいたい作品たちである。</p>
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<p><a href="http://wan.or.jp/book/?p=124" target="_blank">次回「いろんな人が生きている」へバトンタッチ・・・・つぎの記事はこちらから</a></p>
カテゴリー:リレー・エッセイ









