女の本屋

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本棚にあることの幸せ 『性悪猫』 やまだ紫

2010.02.15 Mon

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 長く品切れ状態が続いていた、やまだ紫の作品が復刻された。急逝されたことを受けての復刻なので、複雑な想いはあるのだが……。こちらにはちくま文庫版には収められていない作品や、猫のイラストが「猫ギャラリー」として収録されている。なにより嬉しいのは、彼女の作品を大判で読めることだ。やまだ紫の伸びやかでしなやかな絵を愉しむのに、文庫本は小さすぎると常々感じていた。また、デジタルコミックでは、コマからコマへ移る時間――詩的とさえいえる――をじっくりと味わうことが難しい。作品としっくりする大きさと形があるのだ、と改めて思う。
 短い作品はどれも<猫>が主役だ。さまざまな猫、子猫や老猫、野良猫に家猫が登場するが、やはり母猫の言葉に衝かれてしまう。“わたしはね 子を産むとき 「母親のわたし」も 一緒に生んだよ”“子を育てつ 「母親のわたし」も 育てるよ”“これが なまなかな ことではないから”“子が愛しいか どうなんだか 見極めている ひまがない”。初めてこの台詞を見たとき、母もそんな風にして私を育ててきたのかもしれない、と、何かストンと落ちたような気がしたのだった。また、雨の中、仔猫が外に遊びに出てしまった母猫は“わたしは おかあさんであるから 素直に いえないことも あるよ…”と呟く。そして仔猫がいない時間、“仔猫みたいに”“砂袋みたいに 抱いていてよ”と、母猫は飼い主(お母さん)に甘えるのだ。(私の)お母さんはいつ、誰に甘えるのだろう?――娘の立場しか知らない私は、この謎をかかえたまま、何度も本棚に手を伸ばすのだ。(horry)








カテゴリー:わたしのイチオシ / horry