2010.05.09 Sun
J.D.サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』風の歯切れのよい文体。その主人公ほど反抗的ではない著者は、気の良い亡霊となって、過去と今を、時と場所を超えて自由に行き来する。翻訳家・柴田元幸、初の旅エッセイ。
1975年、ヒッチハイクで訪れたリバプール。1日1回は耳にした「On the Dole」(失業中)の言葉をめぐって、30年後、再訪したパブでの、双子の姉妹と交わした会話は、まるでホントのことと思い込まされるほどに、圧巻のモノローグ。
人とのほろ苦いかかわりの中で、時と空間を遊ぶ精神は、現代作家オースター 『ガラスの街』、ダイベック『シカゴ育ち (白水Uブックス―海外小説の誘惑 (143))』、ジャック・ロンドン『火を熾す (柴田元幸翻訳叢書―ジャック・ロンドン)』、バーナード・マラマッド 『喋る馬(柴田元幸翻訳叢書窶買oーナード・マラマッド)』などの訳書の中にも、いきいきと流れている。(やぎ みね)
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