「貧困さんいらっしゃい」まつだたえこ著 人民新聞社 2019.1.8発行
https://note.com/jinminshinbun/n/n6c8feca9b4b4
摂食障害、貧困の当事者であるまつださんが描く社会風刺四コマ漫画。1頁ごとに描いた日時が記載されており、「2007.10.27 11:00AM」から「2018.10.9 11;30PM」まで、人民新聞*連載100回を記念して書籍化されました。
世の中にあるさまざまな問題、原発、基地、ヘイト…、現場でそれぞれ闘っているみんながいる。が、自分は摂食障害という病との闘い、食欲を理性で制御しようと必死なんだ、というその日々の暮らしから社会を訴えます。
大雨や地震の災害でスーパーの食品が入荷薄になると過食・嘔吐のための食糧も不足する、スーパーのレジ係がイケメンで半額の食品ばかりを大量に買うのが恥ずかしい…。編集長にマンガのOKをもらうと、「自分の能力によって社会とつながっているという実感」「こういうものが人を生かすだよな」と、闇夜のろうそくのように心がポッと明るくなる。(2012.12.10 10:30PM)
インタビューでは、 “普通”に“食べる”ことが困難な原因として性暴力についても語られています。「…性暴力を受けた「穢れた存在」である自分。そこから「清らか」であること、禁欲的であることに活路を見出すようになったのは、関係があると思います。だから「拒食」を手放せないのです。食べずに頑張る自分が好きなんでしょう。食べない自分は清らかなんです」。とはいってもお腹はすいて食べたいから、「拒食」だけではなく「過食」も手放すことができない…。
まつださんには4コマ漫画だけではなく、「日本人的一少女Ⅰ部、Ⅱ部、Ⅲ部」(発行;「松田妙子さんの漫画の自費出版を支える会」)という大作があります。描かずにはいられず、A4のコピー用紙に描いて知り合いに配ったところから始まったそうです。1部は2002.12.18 7:30PMに始まり、Ⅳ部の最終頁は2004.6.5 Ⅰ:20PM。
日本人中学生の水島奈々子が在日朝鮮人、華僑、中国からの留学生の人たちと交流する中で出会うさまざまな疑問や差別に悩む姿を中心に物語は広がっていきます。アジアと日本の歴史問題を軸に、湾岸戦争時の劣化ウラン弾の後遺症に苦しむイラクの人や多国籍軍の兵士、そして依存症やHIV…。まつださんは、この作品をコンビニエンスストアのようにさまざまな社会問題を取り揃えている、自身の学習レポートでもあると紹介しています。
一頁ごとのボリュームと本の分厚さ、テーマの重さに圧倒されますが、可愛いロマンスが道案内をしてくれます。(注:法律、制度など、制作当時のままの個所があります)
https://ksyc.jp/matsuda/index.htm
※1968年「新左翼の情報紙」としてスタート。77年に「人民新聞」と改称し、月3回発行している。立場や党派を問わず「大衆政治新聞」としての役割を果たすべく活動をしている。特定の団体や組織の機関紙ではない。
(泰間妙子)
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