(福島みずほさん 「福島みずほメールマガジン元気ニュース」より)


井上輝子さんが亡くなられた。親しくしていただいていたので、信じられないし、本当に残念です。


日本の社会学者、和光大学名誉教授でいらして、「女性学への招待ー変わる 変わらない女の一生」「日本のフェミニズム」「新編日本のフェミニズム」「岩波女性学事典」など労作を発表されています。

女性学のパイオニア。井上輝子さんは、和光大学で女性学の講座を担当し、まさに女性学を作り、確立し、広げてきた人です。私の周りにも井上輝子さんのご著書「女性学への招待ー変わる 変わらない女の一生」(有斐閣選書)に影響を受けた人が多くいます。この本はオーソドックスでとても読みやすく、説得力のある本です。

井上輝子さんの優しい、いい人柄、シスターフッドがとても表れているのではないでしょうか。


私は、本当に井上輝子さんにお世話になりました。

私は、川崎市で子育てをしてきて、川崎市在住の井上輝子さんはご近所でした。井上輝子さんは、川崎市で、地元で様々な活動をされていました。井上輝子さんは、川崎市の男女共同参画協議会の会長でした。そして、わたしを推薦して下さって、私は井上さんの後、川崎市男女共同参画協議会の会長になりました。活発に議論し、企画をしていたことを覚えています。当時私は30代半ばの若い弁護士。後継に推薦して下さったことに改めて感謝します。地元で本当にお世話になりました。

井上輝子さんのお人柄で、井上輝子さんと一緒にやることは、いつも楽しくやりがいがあるのです。

すごくフラットで、何でも話せる年上のお姉さん。全く構えずに話せる人で、年上の友人のような感じでした。シスターフッドをまさに体現している人でした。

おしゃべりしている時の井上輝子さんの楽しい笑い声が今も耳元で鳴り響いています。一緒にいて楽しい人だったのですよ。


井上輝子さんはたくさんの労作を発表されています。

私は、『ビデオで女性学 映画のなかの女性を読む』(西山千恵子, 細谷実,木村榮, 福島瑞穂共著 有斐閣ブックス 1999年)で、共著を作ることができたことは本当に楽しかったです。井上輝子さん、西山千恵子さん、細谷実さん、木村榮さんとご一緒しました。

この本もそうですが、有斐閣の名編集長満田康子さんに大変お世話になりました。


女性学の立場から、項目を立て、ビデオを見て、担当を決め、書いて、また、議論するということを繰り返しました。わたしは、女性への暴力や母と娘などの項目を担当しました。

ビデオをみんなで見て、女性学の立場から議論をするのですが、これが楽しかったです。至福の時間。ああでもない、こうでもない。有斐閣の打ち合わせの部屋からは、よく笑い声が響いていました。改めて女性学を理解し、深める贅沢で、貴重な機会でした。リーダーである井上輝子さんに本当に感謝しています。

6、7人の女性たちで、数ヶ月おきにおしゃべり会をするのは、本当に楽しみでした。知的刺激と楽しさいっぱい。ここ1年半はコロナ禍でできなくて、オンラインで懇親会をやりたいと思い、延び延びになっていたのが返す返すも残念です。


松井久子さんのドキュメンタリー「何を怖れる フェミニズムを生きた女たち」の中にも井上輝子さんは出演されています。

井上輝子さんは、婦人問題懇話会で、活躍し、社会党の議員であった田中寿美子さんをとても尊敬をされていました。さらに言えば、「山川菊栄記念」」で活動をされ、山川菊栄さんを大変敬愛されていました。私は、いろんな機会に誘っていただきました。思えば、山川菊栄さん、田中寿美子さんの後継者の一人として、がんばって欲しいという思いがあったのだと思います。「母の心、子知らず」ではありませんが、改めて、井上輝子さんの思いや遺志を引き継ぎ、山川菊栄さん、田中寿美子さん、井上輝子さんの思想や思い、行動の後継者の一人として、がんばっていきたいと思います。

もっと色々話をしたかったです。


新百合ヶ丘のマンションに住んでいらっしゃいましたが、以前は、一戸建てに住んでいらして坂を登ってみんなでお伺いしたことがあります。

井上輝子さんは、実に面白い人でした。

インド人で、宝石商の人が来られて、原石も含めて宝石の販売などをされたことがあります。

その時にいた何人かは、宝石という石の美しさに心を奪われましたが、みんなの財布の紐は固く、みんなあまり買わなかったのではないでしょうか。

真面目な井上輝子さんと宝石の組み合わせ、なんて不思議な感じ。

でも今思うには、メキシコなどを愛し、様々な民芸品や芸術作品を愛する、井上輝子さんの別の面も見るような気がします。

原始的なものの持つパワーやエネルギーに惹かれていたのではないでしょうか。


茶目っ気と余裕のある楽しい、穏やかな、しなやかで、まっすぐで、優しい、性格が断トツにいい人。


フェミニズムの本当に良いところは、シスターフッドだと思います。フェミニズムに出会い、生き、元気でいられるのは、その思想もさることながらシスターフッドのおかげです。パイオニアで、年上のお姉さんで、たくさんのものをくれ、支え、育ててくれました。
私だけでなく大学生を含め実にたくさんの人たちを育ててこられたのではないでしょうか。
あまりに早い突然の死、本当に残念です。井上輝子さん、おしゃべりしたいです。


井上輝子さん、ありがとうございました。

フェミニズムの更なる開花と発展をどうか見守っていてください。


福島みずほ

(「福島みずほメールマガジン元気ニュース」より転載させていただきました)

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井上輝子さん追悼 WAN掲載記事 https://wan.or.jp/article/show/9659
みなさまからの追悼のお言葉は以下にも掲載されています。
①https://wan.or.jp/article/show/9660
②https://wan.or.jp/article/show/9661
③https://wan.or.jp/article/show/9663
④https://wan.or.jp/article/show/9665
⑤https://wan.or.jp/article/show/9666
⑦https://wan.or.jp/article/show/9668
⑧https://wan.or.jp/article/show/9669
⑨https://wan.or.jp/article/show/9670
⑩https://wan.or.jp/article/show/9674
⑪https://wan.or.jp/article/show/9675
⑫https://wan.or.jp/article/show/9677
⑬https://wan.or.jp/article/show/9678
⑭https://wan.or.jp/article/show/9679
⑮https://wan.or.jp/article/show/9683
⑯https://wan.or.jp/article/show/9685
⑰https://wan.or.jp/article/show/9689
⑱https://wan.or.jp/article/show/9696
⑲https://wan.or.jp/article/show/9722