日曜日の空は (ハヤカワepiブック・プラネット)
2009.06.23 Tue

日曜日の空は (ハヤカワepiブック・プラネット)
訳者など:アイラ モーリー(Isla Morley(原著), 古屋 美登里(翻訳))
出版社:早川書房
誰でも、愛する我が子を亡くすと喪失感と絶望感と罪悪感からなかなか立ち直れないものだ。しかも、異国の地で、夫や友人や隣人との関係がこじれてしまった時に、明日を生きる希望を見いだせず、自暴自棄になってしまうものだ。そんな「生きる屍」の話はどこにもある。どう立ち直るのか、どこへ向かうのか、生への回復力に感動があり、誰もそれを知りたいと思う。著者は、絶望のどん底にたたき落とされた主人公の内面に深く入り込み、原点に立ち戻ってあらゆる関係性を徹底的に問い直していく。特に作品の後半部は、南アフリカのすべての人びとが直面している過去と現在の「贖罪」「和解」「赦し」「アイデンティティ」の物語を、絶妙な筆致で浮き彫りにしている。 南アフリカから亡命したアビーが3歳の娘を亡くしたことをきっかけに、子供時代を過ごした祖母の土地に戻る。そこで知ったことは、壮絶な家族崩壊の物語だった。父は人種差別者の白人で、兄がアパルトヘイトに抗議する詩人となったことで絶縁関係となる。父は母を責め続け、絶えず暴力を振るった。母は娘を父の暴力から守るために祖母に預けたが、娘のアビーは母から捨てられたと母を憎んでいた。母はアフリカ人呪術師のビューティから毒の盛り方を学び、父を殺した。やがて母も死んでしまうが、子供たちを守るための捨て身の愛の化身だった。アビーが逗留した民宿に強盗が押し入り、修羅場を経験して初めて「生死」の意味を理解する。祖母の土地にはファーム・スクールがあり、エイズ孤児たちが暮らしている。そこにアプリコットの花が咲き、実をつけ続けていた。祖母の土地を開発会社に売るのを断念し、アビーは自己再生する場をそこに発見した。 こうした物語を語り継ぐことが、現在南アフリカの歴史と文学の隙間を埋めて行く役割となっている。著者は新進気鋭の作家。(楠瀬佳子)
カテゴリー:文学 エッセイ 評論










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