2011.06.07 Tue

変わり者 ピッポ
訳者など:トレイシー・E. ファーン ()
出版社:光村教育図書
絵本で歴史を学ぶ、などとやぼなことは申しません。ここに描かれるのは近代の夜明け前、ルネサンス期に一人の職人がなしえた仕事です。 フィレンツェといえばフィオーレ大聖堂ですが、あの大きなドームを何の支えもなく煉瓦の重量バランス力学によって作り上げることができることを証明し、その後の建築に革命的変化をもたらした人間の物語。 誤解と偏見と嫉妬と欲望とに阻まれながら、自分の理性的考えを信じて成し遂げていく姿は、「やり甲斐のある仕事」だとかそういう甘いレベルとは別次元の「仕事」の姿を見せてくれます。 近代を準備したものの一つは、こうした職人魂であったのです。ミケランジェロだって今や大芸術家ってことになっているけど、実は大職人ですものね。労働者としてメディチ家と戦って破れ逃走し、数年間、文字通り地下室生活をしていたりしてますしね。労働運動していたわけです。 あ、だからこの絵本、やっぱり歴史への興味がわいてくるのではないかな? ポー・エストラーダアの絵は、精密であると同時に時代の香りに満ちていて、人物はほどよくデフォルメされ、性格が強調されていますからマンガに似ているので入りやすいです。
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