イベント情報

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開始日時: 2009年12月09日 (水) 18時40分
終了日時: 2009年12月09日 (水) 20時30分
会場: 東京大学法文1号館315教室(本郷キャンパス)
会場URL:
連絡先: myoki@aa.tufs.ac.jp
登録団体:
パンフレット:
詳細: 2009年度 第12回ジェンダーコロキアム
日時:2009年12月9日(水)18:40-20:30
場所:東京大学法文1号館315号室(本郷キャンパス)
書評セッション
妙木忍2009『女性同士の争いはなぜ起こるのか 主婦論争の誕生と終焉』青土社(2600円+税=2730円、上野研究室で著者割引にて2200円)
帯:女たちを分断する「主婦」の呪縛は解けるのか?「主婦論争」研究の画期的成果。上野千鶴子
コメンテーター:熊坂礼子(くまさか れいこ)/大和田未来(おおわだ みき)

本書の紹介:
生き方の選択をめぐる女性同士の争いをテーマに、3次にわたる主婦論争から、1980年代のアグネス論争、1990年代の専業主婦論争、2000年代の「負け犬」論争までを一本の線で結んで、戦後主婦論争として分析。女性のライフコース選択をめぐる論争の「かなめ」には主婦をめぐる問いがあると考え、主婦をキーワードとして、女性たちが時代をこえて受け継いできた論点に迫る。女性が抱く葛藤はどこから来ているのか?女性同士の争いは、時代や論点の変容を遂げながらもなぜくりかえされるのか?その葛藤は、決して個人的な葛藤などではなく、各時代の背景と女性が置かれた位置に関係しているということを、歴史的に明らかにしようとした著作。

著者自己紹介:妙木忍(みょうき しのぶ)
1977年高知県生まれ。高知大学教育学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程修了。東京大学大学院人文社会系研究科修士課程・博士課程修了。博士(社会学)。専門はジェンダー研究と観光研究。2006年度北海道大学観光学高等研究センター学術研究員。現在、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所ジュニア・フェロー。主な共著として『新編 日本のフェミニズム 3 性役割』(岩波書店、2009)、『観光の空間』(ナカニシヤ出版、2009)ほか。近刊として『フェティシズム研究 3 侵犯する身体』(京都大学学術出版会、共著、2010年2月)。本書に関連する著者の論文は末尾に記載。女性同士の対立を研究したくて京都から東京に来ました。

コメンテーター自己紹介:熊坂礼子(くまさか れいこ)
山形大学人文学部卒業後、私立高校の社会科の教員として4年間働きましたが、職場の同僚と結婚し、退職しました。その後24年間は主婦役割を最優先させて暮らしてきました。50歳になった頃、父が事故で障害者になり、それをきっかけに家族の問題が表面化しました。その時に自分の主婦役割について疑問を持ちました。4年前に上野先生と出会い、『サヨナラ学校化社会』や『家父長制と資本制』などを読んで、ようやく同志にめぐり会ったと思いました。現在主婦の当事者研究をしています。『女性同士の争いはなぜ起こるのか』を読んで、待ち望んでいた主婦論についに出会ったと思いました。

コメンテーター自己紹介:大和田未来(おおわだ みき)
東京学芸大学教育学部幼稚園教員養成課程卒業。8年かけて大学を卒業!現在、東京大学社会科学研究所学術支援職員。先生や友人など、理解し、見守ってくれる人に恵まれました。その環境の大切さを実感します。私を離さない問題と向き合いたくて、現在上野ゼミでお世話になっています。当日は、当事者性と降りられなさ、自分自身のポジショナリティについて、また、シングルマザーという、婚姻制度を選ばなかった自分自身の立場から見えてくる「主婦」の立場について考えていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

目次:

第1章 「主婦論争」の誕生
1 「主婦論争」の誕生
2 一九八〇年代以降の論争
3 主婦論争を再定義する
4 女性たちの共通点――比較の基盤
5 女性と男性のあいだの非対称性と女性同士の分断
6 規範が変化しても変化しないもの
7 女性同士の争いを読み解くために
第2章 前史としての主婦論争
1 第一次主婦論争――主婦は外で働くべきか?
2 第二次主婦論争――家事労働はなぜ経済的価値を生まないのか?
3 第三次主婦論争――主婦の正統性を正当化する
4 性役割規範をめぐる女性間比較
5 既婚女性が主役だった論争
第3章 第四次主婦論争(アグネス論争)
1 社会史的背景――働く母親の増加
2 アグネス論争――子連れ出勤は是か非か?
3 アグネス論争をどう読み解くか
4 ライフコース比較言説の登場――山口百恵・松田聖子・アグネス
5 職場神聖論
6 羨望と嫉妬のあいだで――相対的剥奪感
7 ねづよく残る性役割規範
第4章 第五次主婦論争(専業主婦論争)
1 社会史的背景――マイノリティ化する専業主婦
2 前史――社会学者らによる専業主婦論
3 主婦役割全面否定論と主婦役割全面肯定論の対立
4 ライフコースの多様化の容認をめぐって――石原論と林論の対照性1
5 女性の自己利益の優先の是非をめぐって――石原論と林論の対照性2
6 石原論と梅棹論
7 第六次主婦論争への助走
8 石原論の歴史的意義と盲点
9 専業主婦の階層分解を目前にして
第5章 第六次主婦論争(「負け犬」論争)
1 社会史的背景――広がる女性間の経済階層格差
2 論争者のいない論争
3 規範が失われた論争
4 「勝ち犬」と「負け犬」の共通点
5 「負け犬」論争がもたらしたもの
6 「ありのまま」を肯定して生きる
第6章 主婦論争の通時的分析
1 主婦論争のまとめ
2 第一の断絶――準拠対象の変容(第一次~第三次、第四次~第六次)
3 第二の断絶――争点となる規範の変容(第一次~第五次、第六次)
4 第三の断絶――女性の意識の変化(第一次~第四次、第五次~第六次)
5 主婦論争の断絶から見えてくるもの
6 女性同士の争いがくりかえされるのはなぜか
7 新たな問い――規範解体以後も終わらない論争
第7章 主婦論争のゆくえ
1 ライフコースの多様化「以後」の主婦論争
2 女性間を分断する規範のゆくえ
3 女性同士の争いはどこへいくのか

参考文献
引用文献
あとがき
索引

本書に関連する著者の論文:
妙木忍(2003a)「比較準拠集団としての女性」『ソシオロゴス』27号
妙木忍(2003b)「女性間の対立と葛藤――アグネス論争の言説分析――」東京大学大学院人文社会系研究科社会学専門分野修士論文
妙木忍(2005a)「新聞報道に埋め込まれた性別役割分担――アグネス論争における国会報道を事例として」『年報社会学論集』18号
妙木忍(2005b)「女性をめぐる性役割の葛藤処理法の変遷――1950年代から1980年代の主婦論争に焦点を当てて――」『ソシオロゴス』29号
妙木忍(2006a)「女性間の対立と葛藤はなぜ生じるか――『主婦論争』と『アグネス論争』を手がかりとして――」『Sociology Today』15号
妙木忍(2006b)「ライフコースの多様化が生み出す女性間比較――『アグネス論争』の言説分析――」『女性学』13号(2009『新編日本のフェミニズム 3 性役割』岩波書店に抄録)
妙木忍(2009)「ライフコースの多様化が生み出す女性間の対立と葛藤――戦後『主婦論争』を通して――」東京大学大学院人文社会系研究科社会学専門分野博士論文