ミソジニーの伝播を止めるために必要な現状認識の宝庫

国連の推計によれば、いま世界各地で10分ごとに女性殺し(フェミニサイド)が起きています。その根底にあるのは、「男性の権利擁護」と「古き良き家父長制」の維持再生を掲げ、「諸悪の根源たるフェミニズム」を攻撃し、女性や性的マイノリティを差別・迫害するマスキュリズム(男性優位主義)の地球規模での拡大現象です。
本書は「2014年アイラビスタ銃乱射事件」以来注目されはじめた「インセル」などのマスキュリズム運動が、SNSを格好の培養土として増幅・拡大していくプロセスを克明に追った記録です。アルゴリズムの危険なからくり、世界のマッチョ・インフルエンサーたちに共通する屁理屈と胡乱なビジネスモデル、ビッグ・テックを含むプラットフォーム側の怠慢ぶりなどが、「脱退者」などへの取材をもとに詳しく紹介されている点も貴重です。
結論部では、わたしたちの社会がジェンダーバイアスから解放されるためには、幼少期から(特に男児の)感情表現を支え、ジェンダーとITへの理解を深める教育を地道に続ける以外にないと説かれます。
日本でも「2021 年小田急線刺傷事件」を皮切りに、近年はミソジニー的な動機による殺傷事件が増加しているように見受けられます。先例としての欧米の状況を詳説した本書は、だれもがジェンダーを問わず尊重しあう道を探る上で必読のドキュメントです。ぜひご一読ください。

【主な目次】
第一章 マスキュリストは平凡な男性?
第二章 神経衰弱すれすれの若い男たち
第三章 増殖するオス
第四章 アルゴリズムと男性
第五章 命を奪うマスキュリズム
第六章 男子を殺人者にさせない教育は可能か

【著者略歴】
ポーリーヌ・フェラーリ(Pauline Ferrari)
ニューテクノロジー、ジェンダー、ウェブカルチャーを専門とするフリージャーナリスト。モントリオール大学でメディア・文化・テクノロジーを専攻する傍ら、トゥールーズ政治学院でジャーナリズムの修士号を取得。近年はマスキュリズム運動およびオンライン上における反フェミニズム言説の台頭に関する取材・執筆を精力的に続けている。

◆書誌データ
書名 :女を憎めと教わった:SNSで拡がるマスキュリズムの闇
著者 :ポーリーヌ・フェラーリ/ダコスタ吉村花子訳
頁数 :280頁
刊行日:2026/04/25
出版社:新評論
定価 :2860円(税込)

女を憎めと教わった: SNSで拡がるマスキュリズムの闇

著者:ポーリーヌ・フェラーリ

新評論( 2026/04/27 )