2010.09.23 Thu
筆者自身の個人的体験から出発する本書は、歴史と地政学が交錯する「今」において、日本のフェミニズムの限界と今後の姿を描き出す。
100年前に朝鮮半島を植民地化した歴史をもつ国家の一員として、性差別にどう向き合うべきなのか。グローバル社会が到来した今だからこそ、「日本の女性史研究が植民地主義に鈍感」なのではと厳しく問いかける筆者が、植民地時代を生きた朝鮮女性の過去と現在を行き来し、声なき声に耳を傾けることで紡ぎだす朝鮮女性の経験から、わたしたちは多くを学ぶことができるはずだ。とくに、第二章「朝鮮女性、近現代一〇〇年の経験」の重層的な語りを読んでわたしは、朝鮮半島に対する無知を、鋭く抉りだされた気がした。
「歴史の教訓から導き出した結論としての脱植民地主義フェミニズムとは、祖語や誤解をはらんだままの序列化した「国民フェミニズム」、すなわち「帝国のフェミニズム」の饒舌の陰に消去される女の声を聴く思想である」と結ばれる本書は、日本に生きるフェミニストたちの必読書の一冊であることは、間違いないと思う。(moomin)
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