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4.11 求めるものは「新しい私」か、それとも「永遠の私」か 鳥集あすか

2012.07.06 Fri

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「治田君/人の年齢というのはね/3つあるんだよ」
「3つ?」
「そう/まず/肉体年齢/25歳というのはそれね/それから/社会年齢/彼女はOLを7年間やったので一応7歳とする/君は0歳/それから/精神年齢/心理学的に問題にすべきはこちらの方/そして/大事なのはこの3つのバランス/彼女は無職になると同時に/精神年齢も社会年齢も一気に0歳に戻してしまったと言ってもいい/しかし/社会も自分もあいかわらず25歳の女性として彼女を認識するんだ」(『恋愛的瞬間』吉野朔美)

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肉体年齢、精神年齢、社会年齢の歯車の食い違いを描く漫画は少なくない。前回の書き手であるトミヤマさんが紹介された大島弓子は、思春期の少女たちの内面の葛藤を、とても上手に描く作家だと思う。(『バナナブレッドのプディング』、『さようなら女たち』とか。)ヒロインたちが社会的な年齢と、精神、肉体それぞれの年齢とのズレを受け入れ、「新しい私」(トミヤマさんの言葉を借りると、「更新された私」)として一歩進む時、その契機として働きかけるのは「他者の発見」だ。

そしてその発見には、「恋愛的瞬間」が不可欠なのである。ほんの一瞬の、それでいて、最も重要なその瞬間を捉えるのは容易ではない。しかし、吉野朔美は『恋愛的瞬間』の中で「新しい私」へのステップを踏む一瞬を見事に描いた。精神科医森依四月とその患者及び学生たちを中心に描かれる1話完結のストーリーには、様々な恋愛の形が登場する。今回は、その中でも第1話のあらすじを紹介しよう。
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 理想の彼女を求める大学生ハルタは、校内で自分の理想を描いたような「遊馬」を見つける。彼女の姿を無意識に、そして意図的に追いかけ続けるハルタは、理想の世界には自分が不要であることを知る。「彼女は俺を知らないのに/彼女は俺がいらないのに/俺だけがこんなに想ってる/これではダメだ/こんなにバランスが悪くては/奇跡なんか起こらない」。奇跡を起こすため、意を決して遊馬に話しかけたハルタは、その時はじめて「恋愛的瞬間」と出会う。

その「恋愛的瞬間」とはどのようなものなのか、ぜひご自身の目でご確認いただきたい。

さて。「恋愛的瞬間」の存在と、それに続くステップを幼い頃から少女マンガにて刷り込まれているハズなのに、私は「永遠」を求めている。いや、先の大島弓子ですらも『綿の国星』でチビ猫の成長を描かないことからも判るように、きっとみんな永遠に惹かれているハズだ。私だけじゃない。きっと。

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そして、そんな夢のような永遠を描き、『恋愛的瞬間』と、対極の位置にあるのではないかと思うのが、『観用少女』(川原由美子)だ。この作品では、砂糖菓子とミルクで養分を補給する少女の姿をした生き人形(プランツ)と、その人形を巡るドラマが描かれている。作中では、少女の姿を永遠にとどめることこそ至上とされる(もちろん、例外はある)。少女たちが「恋愛的瞬間」に目覚めてしまったり、わがままが増長して大人びた思考をもつことを「育つ」と呼び、忌み嫌う。少女はしゃべらない。ただ自分の主人を選び(ここには少なからず彼女たちの意思が優先される)、見つめ、微笑むだけ。主人がいなくなると、少女は枯れる。

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『眠れる美女』(川端康成)の江口老人も唸りをあげるであろう、理想の少女!禁忌と欲望が交錯する世界!(『眠れる美女』は、とある秘密の宿のお話。宿は会員制であり、会員になる資格は「安心できるお客様」(=老人)であること。彼らは、強い薬で眠らされている美女(美少女)と一晩添い寝をするためだけに宿を訪れる。主人公の江口老人は、彼女たちと添い寝をしながら自身の肉体の醜さと、眠る少女たちのもつ永遠に思いをはせる。その緻密な文章と、内容に背筋を伸ばさずにはいられない。)

 「新しい私」に憧れるのに、「永遠の私」を手放すこともできない。

 そんな相反する感情を秘めながら、今日も私は眼を覚ますのです。

次回「日常のなかの永遠」へバトンタッチ・・・・つぎの記事はこちらから








カテゴリー:リレー・エッセイ

タグ: / 恋愛 / 漫画