カルチャーとフェミニズムの交差
いま、「推し活」と名づけられる活動は、社会現象とされるほど大きな広がりを見せています。

「見る主体」はもはや男性だけではなくなり、「推し活」を通じて多くの女性たちもまた「見る主体」となりつつあり、
かつては「オンナコドモ」のものとされていたエンターテインメントも、現在では批評の俎上に載せられるものとして、多くの人が語り始め、巨大なマーケットとして注目を集め続けています。

その実践を客観的にまなざしながら、主観的に寄り添いながら描き出した田中東子さんの単著『オタク文化とフェミニズム』。
カルチャーとフェミニズムの交差点をぜひご一読ください。


[目次]

はじめに

Ⅰ 「推し活」社会と私たち


第1章 「推し活」社会の現在地
 「推し活」現象はどこからきたのか
 メディア化される「推し活」現象
 拡大される「推し活」論議

第2章 推し活と労働
 エンターテインメントと労働
 推される人たちの労働
 カツアゲされる情熱とやりがい
 やりがいある仕事?
 ケアワークとしての推し活
 推す側の労働

第3章 オタク消費を考える
 盛り上がる「推し活」経済
 企業によるオタク消費の捉え方
 過度な消費文化
 リクレイム・ザ・推し活


Ⅱ アイドルたちがみせるもの


第4章 アイドルたちは何を開示しているのか?

第5章 多様化する男性アイドル――若手俳優・ボーイズグループ・王子たち
 二〇一〇年代の2・5次元ミュージカルの現場から
 「アイドル」として語られる若手俳優
 「アーティスト性」と「アイドル性」は対立しない?
 実力派の「アイドル」という新機軸
 「○○王子」は「アイドル」を製造するパワーワード

第6章 ジャニーズ問題と私たち――性加害とファン文化の不幸な関係
 鈍かったメディアの反応
 性加害に加担したメディアの黙認
 温存される事務所内の権力構造
 ファン文化による不幸な愛着


Ⅲ オタク文化とフェミニズム


第7章 〈スペクタクル〉な社会を生きる女性たちの両義性
 消費主体/消費客体の転覆とその波及
 バラエティ豊かな「イケメン男性」の増殖
 イケメン男性の消費・商品化が示す両義性

第8章 娯楽と恥辱とルッキズム
 ルッキズムとジェンダー
 ルッキズムの定義と歴史
 娯楽と恥辱とルッキズム

第9章 自由と抑圧のはざまで「かわいさ」を身にまとう――「男の娘」を考える
 バンコクでのフィールドワーク
 日本での現状
 「男の娘」の定義
 再現度の上昇
 なぜ、「かわいく」なりたいのか?

第10章 のがれること・つくること・つながること


あとがき



[著者]田中東子(たなか・とうこ)

1972年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科後期博士課程単位取得退学。博士(政治学)。現在、東京大学大学院情報学環教授。専門は、メディア文化論、第三波以降のフェミニズム、カルチュラル・スタディーズ。単著に『メディア文化とジェンダーの政治学』(世界思想社)。共著・編著に『ガールズ・メディア・スタディーズ』(北樹出版)、『ジェンダーで学ぶメディア論』(世界思想社)など。共訳書にポール・ギルロイ『ユニオンジャックに黒はない』(月曜社)、アンジェラ・マクロビー『フェミニズムとレジリエンスの政治』(青土社)などがある。

<書籍の詳細はこちら>
青土社HP
http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3965

◆書誌データ
書名 :『オタク文化とフェミニズム』
  著者 :田中東子
頁数 :248頁
刊行日:2024/9/24
出版社:青土社
定価 :2,420円(税込)

オタク文化とフェミニズム

著者:田中東子

青土社( 2024/09/24 )