著者の鍋島綾さんは、富山とデンマークを行き来する北欧アンティークバイヤーです。北欧に通って9年目になる鍋島綾さんが、現地での暮らしのなかで、福祉や子育て、家族のありかたなどに触れ、エッセイとしてまとめた著書が11月に刊行されました。

高校生の頃「学校に行きたくない！」と反抗するも「やりたいこと」がわからず悶々とした日々を送っていた著者。その後、新卒で入った会社や転職先でも挫折と失敗の連続。しかし、失敗するたびになぜか再会する「デンマーク」に救われて、30歳を目前に北欧へ渡ることを決意します。
その後、オペア（住み込みベビーシッター）としてデンマークでの生活をスタートした著者は、子供たちをはじめ現地の人々から、自分らしく生きるためのヒントを得ていきます。

著者の行き来するデンマークは、ジェンダー格差の解消がすすんでいます。"この子、試験管からきたの"と話す女性とその息子に出会ったエピソードでは、「当時パートナーもいたけれど一人で自分の子供を育てあげることでエンパワメントになると思ったの」と話す姿をみて、女性がたったひとりでも輝いて生きていける環境が整っていることを目の当たりにします。しかし、この女性も「フェミニズムの意味を間違えたようだね」と言われ傷ついたこともあったという話から、現地のリアルな様子も伺うことができます。

本書では、女性の生き方、多様な家族のかたち、戦争に対する子供たちの反応など、現地の人々と一緒に暮らし、そして長年通ったからこそ描ける37のエピソードを収録しています。また、デンマークやスウェーデンのリアルな社会がわかる時事コラムや、ガイドブックとして読みたい旅コラムも収録しており、人々の暮らしの息吹を感じられる写真やイラストも満載です。

読み終える頃には、優しくも前に進んでいけるような風が読者の背中を押してくれる一冊となりました。
鍋島綾さんは本書が初めての著書となります。瑞々しく、素直な文体で描かれる北欧での日々を、ぜひお読みいただければと思います。

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◆書誌データ
書名　：『ゆるりと風に。ここは北欧　—Just as I am』
著者　：鍋島綾
頁数　：216頁
刊行日：2024/11/01
出版社：桂書房
定価　：1,980円（税込）