
名作のラストを知らずに死ぬのはもったいない
「名作の『アタマ』ばかりがもてはやされ、「オシリ」が無視されてきたのはなぜなのか」
川端康成の『雪国』が「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」とはじまり、福沢諭吉の『学問のすゝめ』が「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと言えり。」であることは、なんとなく知っている。
だけど、あれ、じゃあ最後の一文は?
名作のエンディングって、全然知らないかも……
そんな声に応えるようにして、ええぃ!古今東西の名作を〈オシリの一文〉からちゃんと味わってみようじゃないの!と、斎藤美奈子さんが読売新聞ではじめた人気連載をまとめ、新たな書き下ろしも豪華に加わえた完全版がこの1冊。
世界の文豪、SFの巨匠、日本の有名作家たちを、つぎつぎ読む、読む、読む!当たり前だが、ラストの一文の意味や味わいを理解するには、巻数がどれだけ膨大でも、すべて読み通さねば書けない。
ときに、好みじゃない、面白くない作品であったとしても、斎藤さんはそんな苦行(?)をコツコツつづけ、その数300冊!本書だけで、日本と世界の主要な小説、ノンフィクションの読みどころ、突っ込みどころ、作家のこころまで覗けてしまうのである。
1ページで1作を紹介するコンパクトさもうれしい作り。ぜひふと開いたページに紹介された本の〈オシリ〉と斎藤さんの解説を読んでみて、〈いつか読みたい名作リスト〉の予習をしてみては。
なぜこんな結末なの?そのラストで良かったの?など、きっと新しい角度で名作と出会い直せるはず。
最後に、ラストを知ったら読む楽しみが減るよと心配する方へ、斎藤さんの「はじめに」の文章から、心を強くする一文をどうぞ。
「ラストが割れたくらいで興味が失われる本など、最初からたいした価値はないのである。私たちは『ハムレット』のラストでハムレットが死ぬことを知っている。『坊っちゃん』のラストで坊っちゃんが四国を去ることも知っている。知っていても、『ハムレット』や『坊っちゃん』の魅力が減じることはあり得ない。(…)書き出しの一行が開幕のファンファーレなら、ラストは輝かしいフィナーレである。そこを読まずに本を閉じるのは、あまりにもったいない。」
書名 ラスト1行でわかる名作300選
著者 斎藤美奈子
頁数 328頁
刊行日 2025/1/22
出版社 中央公論新社
定価 2750円(10%税込)
