「ポスト構造主義フェミニズムとは何だったのか」という問いは、たんなる理論史的回顧ではなく、現在のジェンダー/セクシュアリティ研究が抱える深刻な混乱への応答です。

近年「セックスもまたジェンダーである」という主張は、生物学的性別そのものが社会的構築物だという洞察として広く受け入れられてきました。しかし、この立場はセックスとジェンダーの区分を抹消することで、「社会がいかに性差(に見えるもの)を作り出してきたのか」という問いを後退させてしまいました。

本書では、J.W.スコットやL.ニコルソン、J.バトラー、フランス唯物論フェミニズム、ケスラー&マッケンナ、S・ボーヴォワールといった重要論者を丁寧に検討し、現在のジェンダー理論に内在する論理的矛盾を明らかにします。そして、フェミニズム理論が長い歴史のなかで切り拓いてきた「性差の社会的構築」という視座を、どのように継承しうるかを問い直します。

「性別二元論批判」や「性自認」をめぐる近年の議論が見落としてきた問題を正面から検討し、概念的枠組みを立て直すことで、フェミニズム理論の射程を拡張することをめざした一冊です。問題の所在をともに考えていただければ幸いです。


書名 :ポスト構造主義フェミニズムとは何だったのか
著者 :古川直子
頁数 :222頁
刊行日:2025/6/25
出版社:京都大学学術出版会
定価 :2420円(税込)

ポスト構造主義フェミニズムとは何だったのか (学術選書 119)

著者:古川 直子

京都大学学術出版会( 2025/06/25 )