
「女性にとって世界最悪の場所」善悪だけでは語れない女性たちが生きる現実
2021年に駐留米軍が去り、イスラム主義組織タリバンが実権を握るアフガニスタンは、「女性にとって世界で最悪の場所」とも呼ばれています。国際社会から見放されたこの国で、何が起きているのでしょうか。本書では、女性たちの目から見た「タリバンの世界」に焦点を当てました。
「泣きながらかもしれない。遅くなるかもしれない。それでも、いつか私は学校に戻り、人の痛みを知る医者になるでしょう」
これは、あるアフガニスタン人の23歳の女性が寄せた手記の一部です。彼女は14歳のころに病気で母を亡くし、医者になって人を助けたいと考えて勉強に励んできました。タリバンは、女性が小学校から先の学校に通うことを禁じましたが、彼女は近所の家庭の掃除を担ったりして家計を支える傍ら、オンラインでトルコ語と英語を学んできました。進学し、医者になる夢を今もあきらめていません。
アフガニスタンは長年にわたる戦禍に翻弄されてきた世界の最貧国の一つです。2001年には米同時多発テロの報復として米軍が侵攻し、約2カ月で当時のタリバン政権を打倒。日本や欧米諸国は、この国の平和構築と民主化を支援しましたが、2021年にバイデン米政権が米軍を撤退させると、タリバンが再び実権を握りました。タリバン暫定政権が国際社会から孤立する中、市民の暮らしは困窮し、女性たちの自由は奪われています。
本書では、タリバンの思想に影響を与えたインド北部にあるイスラム教スンニ派のデオバンド学院や、反タリバン勢力の牙城と呼ばれてきたアフガニスタン北部パンジシールなど、現在のタリバン支配を考える上でカギとなるさまざまな現場を訪ねたルポも盛り込みました。
また、中東の戦禍が広がる裏で、「もう一つの戦争」と形容されるアフガニスタンと隣国パキスタンの衝突の背景もひもときました。
長年の戦争は、この国と国際社会に何をもたらしたのか。世界が目をそらそうとするこの国で、女性たちは何を思い、どう生きているのか――。歴史的背景の分析や専門家への取材も交えて、アフガニスタンのいまを読み解きます。
【目次】
第1章 秘密学校の少女たち
――教育の権利を奪われても、希望の光は消えない
第2章 狙われた学びの場
――恐怖と隣り合わせの中、教育を求める少女たち
第3章 きしむタリバン支配
――顕在化する内部対立、振り回される市民
第4章 安息の地を求めて
――国境を越えて逃れる人々、そこで直面する新たな壁
第5章 タリバンに未来はあるか
――閉ざされた社会にあっても、女性たちは前に進む
◆書誌データ
書名 :タリバンの世界 秘密学校の少女たち
著者 :川上珠実
頁数 :304頁
刊行日:2026/03/17
出版社:毎日新聞出版
定価 :1540円(税込)










