
排外主義や外国人差別が高まる今、日本語圏で暮らす全ての人々に読んで欲しい1冊
日本社会には、現在もなお、在日コリアンへの差別や偏見が根深く残っています。また、昨今では排外主義的言説が平然と流通してしまう状況下にあり、在日コリアンはもちろんのこと外国に出自をもつマイノリティらに向けられる「牙」の度合いは如実に強まっています。折しも本書を編集作業中だった2025年の夏の参院選では、露悪的なまでの排外主義的な政策を打ち出す政党が躍進し、「外国人問題」が選挙の争点にまでなりました。このような状況は、日本に暮らす多くのマイノリティ達にとって大きな不安・苦悩・心理的負荷などをもたらしていることと思います。
しかし、考えてみれば、在日コリアンや他のマイノリティが抱えている不安・苦悩・心理的負荷の問題は最近になって始まった訳ではありません。これまでも様々な形で差別や蔑視は、日本社会の中で公然と流通し、かれらを苦しめてきたからです。では、こうした事態に対して、日本の臨床心理はどのような「心のケア」を行ってきたのでしょうか? 医療や臨床の現場のみならず、様々な領域において「ケア」が必需として求められるようになってきた昨今でさえも、マイノリティが抱える心理的苦悩は等閑視され続けてきました。
こうした空白地帯に「光」を当てることが、本書の一つの大きな狙いです。ご自身も「在日コリアン」としての実存的な苦悩を抱えてきた著者だからこそ言語化できた本書は、理論と実証、歴史-社会-個人を常に焦点化しつつ往復しながら、それでいて「ナラティヴ」としても読むことができます。
本書が提示する様々な論点には、日本語圏で暮らすマジョリティの人に向けた問題提起となっていると思います。本書が一人でも多くの人に読んでもらえることを願っております。
◆書誌データ
書名 :歴史的トラウマと日常を結ぶ心理臨床-在日コリアンに対する実態調査と臨床実践
著者 :朴希沙
頁数 :288頁
刊行日:2026/1/16
出版社:明石書店
定価 :4400円(税込)










