
教養とはファッションのように”身につける”ものではない。AIに頼っても育たない。キャリアアップが目的ではない。お金を儲ける手段ではない。そしてファスト教養、インスタントな教養などない。
長谷川真理子さんは言う。『教養とは、小さいころからの興味関心に沿って学んできた蓄積をもとに、「この分野をもっと知りたい」「このテーマは全然触れてこなかったから本を読んでみよう」と整理しながら向上していくものです。つまり、本を読むにしても内容を要約するにしても、その人ならではの過程とやり方があるはずです。それを他人任せにするなんて、とんでもない。大事なのは、何かを「知っている」というだけではなく、知り得た「知」を活用する人になることです。』(本文p.199)
本書にはリベラルアーツの学びについて、五木寛之さん、藤原正彦さん、上野千鶴子さん、長谷川真理子さんとの対談が収められている。著者である森本あんりさんは、神学者であり、東京女子大学学長としてリベラルアーツとは何かを考え続けてきた。
『第五章 日本人が「新しい知」を生む時代へ』のなかで上野さんは『学者が研究するモチベーションの根源は何か。それは「面白い。知りたい」という好奇心に尽きるでしょう。そうした人間を突き動かす基礎的な研究にこそ、半世紀後に人びとのためになるかもしれない可能性が秘められていることを、私たちは思い返すべきです。』と語る。
人間をより人間らしく育てることを目的とした教育、人が人であることを貫くために必要な精神の力を養う学び。大学人としてリベラルアーツに向き合い続けてきた森本さんは「だれからどう学ぶか」で本質と真価が問われるという。
得られた知識でその人自身が変わり、ものの見方や考え方が変わる。危機の時代のいまこそ、人間の理性、本質、信じられるものを生み出す力を持っているわたしを創造する。
■堀 紀美子■
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