昨年末12月26日付の朝日新聞夕刊に載った映画評論家の秦早穗子さんの記事「海賊のフィアンセ/人間の本性に 殴り込み」が気になって、近くの映画館で公開が始まるのをじりじりと待っていた。「ネリー・カプラン レトロスペクティヴ」。私が見た大阪のシネ・ヌーヴォでの公開は、どうやらほぼ終盤だったようだ。なので、この記事を読んで「見たい!」と思った未見の皆さん、アンコール上映を働きかけてください。その価値は、きっとあります!(キッパリ)
ブエノスアイレス生まれのウクライナ系ユダヤ人、ネリー・カプラン(1931-2020)。公式ホームページのイントロダクションには「2019年、ニューヨークのQuad Cinemaがカプランのレトロスペクティヴを開催し、『海賊のフィアンセ』公開 50年を記念したレストア版(米国プレミア)のほか7作品が上映され、その同時代性が<再発見>された」とある。
おそらくその時に付けられたキャッチコピーが、カプラン自身の言葉とされる“SMILE,BUT NOT FOR LONG,LADIIES AND GENTLEMEN OF THE PATRIARCHY”(日本版チラシにある「オトコ社会のみなさん、笑っていられるのも今のうち」がそれ)。

今回、日本で公開されたのは、いずれも国内劇場初公開の4作品。長編劇映画デビュー作の「海賊のフィアンセ」(1969)、「パパ・プティ・バトー」(1971)、「シャルルとリュシー」(1979)、最後の監督作「愛の喜びは」(1991)。すべて喜劇だが、辛口で今見ても少しも古臭く感じないのはどういうわけだろう。それぞれの作品の紹介は公式ホームページに譲るとして、フランス映画らしく、ヴィヴィッドな映像はおしゃれでコミカル。笑い飛ばしながら、見終わった後も心に残り、何度も反芻して味わい深い。
自身の作品を「フェミニズム映画」と呼ばれることを拒み続けたネリー・カプランは、1969年のインタビューで「男性向けの映画など存在しない。女性向けの映画など存在しない。ただ映画が存在するだけだ。人が『女性向けの映画』と言うとき、それはすでに軽蔑的なのだ」と発言している。彼女の思いはもちろん尊重するが、カプラン4作品の国内劇場初上映は、WANサイトで言及すべき今年前半の快挙だと私は思う。
「ネリー・カプラン レトロスペクティヴ」公式ホームページ https://www.nellykaplan.jp/