5月24日夜、たまたまテレビのニュースを聞きながら夕食の支度をしていた時です。次はスポーツですと、キャスターが変わって、競馬のオークスというレースで女性騎手が初めて優勝したとか言っています。あわててテレビの前に行きました。

 ちょうど馬の群れが走り出したところでした。どの馬が速い? どれが優勝? 一塊になって一斉に走り出しているので、全くわかりません。ところが、よく見ると、画面ではありがたいことに優勝した馬に矢印をあてて追ってくれています。小さい矢印ですが、それを見ていけばどの馬が女性騎手の乗っている馬かがわかります。矢印は初めは後ろの方についていて、先頭集団からかなり遅れていました。あれ? どこにいるの? あんな後ろで1等になれるの?と見ているうちに、次の瞬間は、あ、すごい!速い!速い!と驚かされました。そのまま矢印はどんどん集団の真ん中に近づいていきます。そして、後半もその勢いをさらに加速させ、矢印は他の馬の群れの中をつき進んでいきます。遂に、あれよ、あれよと言うまもなく、矢印の馬は頭だけ飛び出してゴールしました。

 それが今村聖奈騎手の乗ったジュウリョクピエロでした。ほんとにあっという間のできごとでした。2分25秒6の勝負だったと新聞は書いています。時速で計算してみると59580m、ほとんど60㎞です。町中を走る自動車よりもはるかに速いです。

 優勝の瞬間の今村騎手の笑顔が何とも華やかで美しかったこと!! すごい偉業を成し遂げた溢れんばかりの達成感の表れでした。

 競馬というスポーツにはまったく興味も関心もなく、どういう人が賞金をもらうのか、馬券を買うとどうなるかも全くわかりません。わたしの競馬の知識と言えば、武豊という小柄な選手がいて、何度も優勝しているといったそれだけです。ですから今村騎手がどんな経歴でどうやってここまできたかなど全くわかりません。

 でもひとつだけ、この数分のニュースを見てわかったことがあります。女性も男性も全く同じ条件で走るレースがあるということです。陸上競技の100m競走でも、水泳の競泳でも、また、スキーの回転競技にしてもジャンプにしても、男性と女性は別のグループで競いますね。市民マラソンは女男一緒に走りますけど、オリンピックのマラソンは別ですよね?

 競馬はそうではなかった。18頭の馬が疾走し、女性騎手は今村さんだけ、後の17頭の騎手はみな男性。女男18人が馬を御する集団が一斉に走り出し、猛烈な勢いで馬を走らせる男性騎手群の中を、女性騎手がそれに負けない激しさで馬を走らせて駆け抜けて行ったこと!!

 つまるところ、競馬に関しては騎手の性別は関係がないということです。だったら今ごろ女性初なんて騒ぐことの方がおかしい、と率直な疑問が出てきます。以前も今も女性騎手はいるようです。新聞記事では、現在JRA(日本中央競馬会)に所属する騎手は140人、その中で女性は6人だそうです。何と少ない!! そして2019年以降でG1という代表的な大きなレースに出場したのは延べ7人、いちばんいい成績は5位だったそうです。

 ここで、全く性差なく同じ条件で女性が参加できるスポーツになのに、21世紀も4分の1を経過した今の時点で初めての優勝というのはどういうことかを考えてみます。

 今まで、女性が優勝できなかったというのは、優勝できるための人材が育っていなかったということでしょう。人材がいないということは、その世界に参入しようとする女性がいなかったということ。そしてそれは騎手という職業が女性にとって自分を発揮できる場とは思われてこなかったということでしょう。

 そういう状況を生んだのは、女性は騎手にはなれない、女性に騎手は無理だという社会全般の意識があったからでしょう。だから馬が好きな女の子はいるし、騎手はかっこいいと思う女性もいても、騎手なんて無理、無理と思い込んでいたのでしょう。 こういう社会の風潮を作った根源は、○○は女性にはできない、××は女性には無理、といういろんな分野で語られてきた女性への偏見でした。

 今、その女性にはできないという偏見の一つが破られました!

 今村さん、初めて見せていただいたテレビのレースはすばらしかったです!
 本当におめでとうございました!
 そして、本当にありがとうございました!