【どんな本?】
「ダイバーシティという言葉は聞いたことがあるけれど、具体的にはよくわからない」という方にも読みやすい入門書です。各章の最後には読者自身が考えたり、議論したりするためのワークをつけています。

本書は3部構成です。各部は「ジェンダーとセクシュアリティ」、「エスニシティ・多文化共生」、「障害・病気」と3つのテーマを取り上げ、それぞれについて、教育や労働などの社会制度と結びつけながら、実際にどのような問題が起きているのかを掘り下げています。

【なぜダイバーシティについて学ぶ必要があるの?】
私たちは、日常生活の中で、知らないうちに誰かを傷つけてしまうことがあります。差別や不当な扱いを経験した人にとっては、その相手を「加害者」と考えたくなることもあるでしょう。ですが例えば、セクハラ事例などを見ていると、相手を傷つけた人が、自分自身を「加害者」であると認識できるとは限りません。相手の置かれている状況を知らなかったり、想像できなかったりすることで、無意識に人を傷つけてしまうようなことがあるからです。

では、ダイバーシティについて学ぶのは、意図せず誰かを傷つけることを防ぐためなのでしょうか。私の答えはイエスです。誰もが、知らないうちに誰かを傷つけてしまう可能性がある。まずは、そうした前提を共有してもよいのではないでしょうか。

私たちはふだん、「自分の周りには多様な人々が存在しないし、多様な人々には出会わなかった」と思い込んでいるかもしれません。見えているのに「見えていない」人や、私たちが知らない事情を抱えて生活している人がいます。そうした存在に気づくことが、今まで以上に求められているのではないでしょうか。

日本に限らず、世界は多様な人々がともに暮らす場所です。一人一人の置かれている立場や状況、抱えている問題について知ることで、私たちは日常の中で、ちょっとした配慮や気遣いができるようになるかもしれません。それで救われる人がきっといます。

もちろん、個人の思いやりでは解決できない問題もあります。ときには社会制度そのものを変える必要があるでしょう。そうした問題について考え、社会のあり方を変えていくためにも、知識を持った市民の存在は、より公正な社会をつくる力になるはずです。

多様な事情を抱えながら生きてきた人々の存在を知り、お互いを傷つけることなく、だれもが安心して暮らせる社会をつくるには、どうすればよいでしょうか。また、無知や無理解が人を傷つける可能性があるということを、どのように伝えていけばよいでしょうか。

この本は、こうした問いについて考えるきっかけと材料を提供しています。一執筆者として、読者のみなさんといっしょに、考えていけたらと思います。

本書の構成と各章の執筆者

はじめに――「ダイバーシティ」って何?
序章 ダイバーシティについて学ぶ意義(反橋 一憲)
第Ⅰ部 ジェンダーとセクシュアリティ
第1章 ジェンダーとは何か(石河 敦子)
第2章 性の多様性(中村 奈津子)
第3章 学校教育とジェンダー・セクシュアリティ(中村 奈津子)
第4章 労働におけるジェンダー・セクシュアリティ(石河 敦子)
第5章 性的マイノリティへの差別とその解決へ――クィアという視点(反橋 一憲)
第Ⅱ部 エスニシティ・多文化共生
第6章 「日本人」の範囲――エスニシティの視点から(反橋 一憲)
第7章 外国人の受け入れをめぐる社会制度(永島 郁哉)
第8章 日本に住む外国人の社会生活(永島 郁哉)
第9章 多文化共生に向けて(菅野 淑)
第Ⅲ部 障害・病気
第10章 障害とは何か(鶴宮 慶)
第11章 障害と社会(鶴宮 慶)
第12章 障害・病気による差別(反橋 一憲)
おわりに
もっと知りたい人のためのブックガイド

◆書誌データ
書名 : 大学生のためのダイバーシティ入門 : 差別や偏見をなくすために知っておきたいこと
著者・編者 : 反橋 一憲
頁数 : 216頁
刊行日 : 2026年9月10日
出版社 : ナカニシヤ出版
定価 : 2,530円(税込)