
中国に女性が創造し使ってきた文字があるのをご存じですか。「女書Nüshu」という、湖南省江永県に伝わる文字です。その最後の伝承者何艶新さんが去年10月に亡くなりました。私は、中国湖南省江永県の農村の女性たちが、自らの表現意欲を満たすため、また、女性間の緊密なコミュニケーションツール獲得のために創造した、それは美しい機能的な文字に魅せられて30年間江永県に通って調査しました。
この地方の女性たちは、新中国が建設される以前は、結婚も自分では決められず、男の子を生む道具として夫や舅姑に従うしかなかったのです。その女性たちは娘の時代は比較的自由で、結交姉妹という義理の姉妹関係を結び、互いに遊び、働き、女紅(糸紡ぎ・機織り・縫物・刺しゅうなどの女性の手仕事の総称)に励みます。しかし、結婚によってそれらは断ち切られます。
女書は、結婚で別れる姉妹や義理姉妹たちが互いに思いを通わせ合うために作ったとされる文字です。女性が自分たちの意思を伝え合うに必要な約450字もの文字を作ったという例は世界中探しても他にありません。この山村の女性たちのどこに文字を創造するようなエネルギーと根性があるのか知りたくて1993年から調査に通いました。そこで出会った何艶新さんというすばらしい伝承者から女書のことをいろいろ教わりました。その結果をまとめたのが『中国女書ものがたり』(明治書院)です。興味のある方はぜひお読みください。
内容は以下のとおりです。
序章 女書ってなんですか。
第1章 女書との出会い。
第2章 女書の故郷を訪ねる。
第3章 女書の現状と保存。
第4章 伝承者のものがたり。
第5章 三朝書ものがたり
第6章 国会図書館寄贈の15冊
◆書誌データ
書名 :中国女書ものがたり
著者 :遠藤織枝
頁数 :272頁
刊行日:2026/7/18
出版社:明治書院
定価 :4,180円(税込)









