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須賀 敦子

2009.07.27 Mon

私たちはすこしずつ、孤独が、かつて私たちを恐れさせたような荒野でないことを知った
(須賀敦子『コルシア書店の仲間たち』より、『須賀敦子全集 第1巻』所収,河出書房新社、2006年、p.374) イタリアのコルシア・ディ・セルヴィ書店という社会・宗教改革をめざす場所に身をおいた若い日と、その仲間たちとの帰し方をみつめた須賀敦子さんのエッセイからの一言。この直前には、「人それぞれ自分自身の孤独を確立しない限り、人生は始まらないということを、すくなくとも私は、ながいこと理解できないでいた」という言葉があります。ここでの孤独を確立する過程とは、かつて理想を共有した仲間たちがはじめからもっていた、人が個人であるかぎりうめられないちがいに気づくことでした。
 わたしにとって、フェミニズムとは自分なりの孤独を言葉にする作業なのかもしれないとおもいます。その先に、荒野につづくのではない別の道を探せるといい。孤独をみつめるのは人を切りすてるためではなく、共に生きるためなのだから。自分が、捨てられないエゴを持ったフェミニストだとおもいしるとき、つぶやく言葉です。

カテゴリー:女のことば

タグ:須賀敦子