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ぺ・ヨンジュンの『韓国の美をたどる旅』 中西豊子
2009.10.29 Thu
一人の俳優が、これほどまでに大きな影響を与えるなどと韓国でも日本でも誰が思っただろう。台湾や香港でシンガポールやフィリピンで、そして日本で大旋風を巻き起こしたぺ・ヨンジュンだが、彼の人気は衰えるどころかますますフアンの数と求心力を増している。出演作は普通の人気俳優では考えられないほど少ない。近頃では2年に1度ほどしか出演しない。なのに先日の来日の時の熱気はすごかった。その魅力に、外貌の良さや演技力だけでなく、人柄の良さも付け加える人が多いのも俳優には珍しい。 そんな彼が1年をかけて本を書いた。写真もカメラ歴の長い彼自身の作品だ。彼は前書きでこんなことを言っている。
「私が享受している人気について、私自身はいまだに戸惑い、いつも身に余ることだと思っている。また、とてもありがたいと感じている。この気持ちをお返しする手立てはないだろうかと思った。(中略)俳優としてではなく、孤独なものや懐かしいものを見つけたいと願う一人の人間として、詳しく知らなかった韓国の文化を学ぶことで自分を再発見したかったし、(中略)美しくて素晴らしい韓国文化を見つけて贈りたいと思った。(中略)この本は韓国文化を求める初心者として不器用ではあるが真摯であろうとした私の記録にすぎない。(後略)」
彼の言葉通り、実に真摯に自国の伝統文化を追いかけ、経験し学んでいる。彼の完璧主義と凝り性の気質もこの本には満載だ。
韓服の生地を染める紅花染め、漆芸、韓紙、陶磁器、伝統酒、茶(茶摘みからできるまでを経験)、キムチ漬けなど、それぞれの名匠の家に泊り込んでの修行の一部始終や作り方までが書かれている。お寺でも話を聞くだけでなく、僧と同じ体験をする。
弟子入りされた師匠たちは、彼の真剣さと集中力に異口同音に感心し半ばあきれ気味だ。
多分今までに、こんないい伝統文化案内はなかったはずだ。
既によく知られているが、ハングルと世宗大王の話や弥勒菩薩像の話なども、彼の目線で書かれているので、非常に興味深い。弥勒寺跡で書いたという詩もなかなかいい。言葉の端々、写真にも彼の誠実さと温かさが籠もっていて、彼のフアンでなくとも心地良く感じられるだろう。
この本は、普通の観光案内ではないが、彼がたどったルートも書きいれられていて、韓国旅行に携帯すればいいだろう。(ただし400ページもあって少し重いが)
著者が、ぺ・ヨンジュンならではの話だが、この本をたどるツアーが早くも売りに出されて、何と発売とほぼ同時に、何カ月も先まで売り切れたそうだ。本は、韓国でも日本でも既にベストセラー入りだという。さすが!というべきか。(日刊スポーツ新聞社刊)
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