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映画『ずっとあなたを愛してる』を見て 山埜まや
2010.02.28 Sun
友人に誘われて、久しぶりに、映画を見た。
告白すると、最近も映画館で映画を見てはいる。たとえば、『アバター』。実は、この手の映画が結構好きで、次は、『Dr.パルナサスの鏡』を見ようなどと思っていた。が、今は、この映画に誘ってくれた友人に感謝している。
ネタバレになるといけないので、筋書きは書かないが、タイトルを見たときは、恋愛ものかと思った。恋愛ものは好きではない。昔から、純愛映画だの熱愛映画だの(それもヘテロもの)は、見ない。なんか、白けるから。でも、金輪際、恋愛映画に誘うような友人ではないので、インターネットで調べてみた。恋愛ものではないが、姉妹ものらしい、とわかった。私には、姉妹もいないので、またもや、よーわからん映画に思えた。が、せっかく誘ってくれたのだし、たまには、活劇でないものも見ようかと思って、ほいほいと映画館に出かけていった。 これは、余談だが、ハリウッド映画というのは、どんな冒険活劇でも、ロマンス(しかもヘテロの)は欠かせないらしい。『アバター』だって、主テーマの一つだった。異星人と地球人の恋愛の仕方が、とってもハリウッド的だった。(ま、ほんとに余談だけど。)
で、ヘテロ恋愛ものは「ケッ」と思ってしまう私なのだが、それではないらしい、というだけの予備知識で、ほいほいと映画館に出かけて行ったのだ。映画館では、二つの映画を上映していたが、もう一方は若者が多く、私たちが見る映画は、オーバーシックスティと思しき男女が並んでいる、というように、見事に色分けされていた。きっと、千円で映画が見られる人たちなんだろうな、と、もうちょっとのところで、まだその恩恵に浴せない私は、いくぶん、ひがみっぽくなったりした。が、映画が始まると、どんどん引き込まれていった。
主人公の暗さ、絶望感が、ひたひたと伝わってくるが、表層的な情報しか与えられず、その真相が明らかにされない。最後の最後に、明かされるストーリー展開なのだが、気づくと、珍しく涙が私の頬を伝っていた。もちろん、私は、同じ体験をしているわけではないが、しかし、彼女に似た絶望を知っている、と思った。私は違うエピソードを抱えているが、大切に思う人を不幸にしてしまった罪悪感を抱いたまま終わることはなく、しかし、それは避けがたく、再度生き直しても同じ過ちを犯すしかないような無力感もあり、身悶えするような思いがわき上がってきた。映画を見終わったとき、友人も、「久しぶりに涙が出てしまった」と言った。それ以上は、お互いに、なぜ泣いてしまったのか、について語り合わなかった。この主人公と同様に、それは、誰にも言えないことだったりする。
ある程度の年齢まで生きてくると、エピソードは違うけれども、それぞれ誰にも言えない苦しみをかかえるのかもしれない。辛すぎて、自分の幸福などに何の興味もなくなるような、あまりにも苦しくて、自分のこれからのことなど、どうでもよくなるような、そんな記憶を、人知れず持つのかもしれない。年をとるということは、そのような悲しみが積み重なることかもしれない。
悲しみが積もるから、時折、若いときには気づけなかった美しさに気づくこともある。美しさへの感受性は、悲しみの裏返しかも。
この映画の見所は、と聞かれてもあまりわからない。しみじみ見てください、と言うしかない。
が、実は、もう一つ、ある。わたし的には、と言うべきかもしれないが。主人公の妹役のエルザ・ジルベルスタンが、と~ってもいい。姉を慕うかわいらしさ、純な感じが、とても魅力的だ。実は、途中まで、あんまりにもかわいらしいので、深刻なストーリーにこういうかわいい人が登場すると、ストーリーに没入できなくて、ちょっと困るな、と思っていた。ストーリーよりも、彼女の登場を心待ちにしてしまう心境になるのだ。彼女の姿ばかり目で追ってしまう。かわいらしくて、誠実な妹キャラが浮き立つ人だ。もともと「姉気質」の私は、一目惚れで、はまってしまった。(口の悪い友だちが、「いや、おやじ気質だろう」と言うのは目に見えているが。)
『ずっとあなたを愛してる』というタイトルも、ほぼ、原題通りのようだ。愛があふれた、善意の人たちの物語だ。悲しみと優しさが詰まっている。(そして、エルザの愛らしさと、、、、ため息。)