エッセイ

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将来の離婚に備える【打越さく良の離婚ガイド】NO.1-9 

2012.05.18 Fri

【打越さく良の離婚ガイド】NO.1-9 将来の離婚に備える

9 ゆくゆくは離婚したいと思っています。どのような準備をしたらいいでしょうか。

◎ 見通しをつける
 「相手とはもうやっていけない,離婚する!」そう思っても,まずは離婚後の生活の見通しなども考えてみましょう。離婚は,あなた,そして子どもがいる場合には子どもにも,生活に大きな変化があります。不仲な相手と別れてきれいさっぱり,明るく毎日が過ごせるなら,それに越したことはありませんが,お金がない,住むところがない…と生活の苦しさに押しつぶされては辛いです。そんなことにならないように,大体の見通しをつけておきましょう。

◎ 当面の費用の確保
 離婚,その前に別居となると,敷金礼金,引っ越し代やその後の生活費が必要です。婚姻費用(離婚までの生活費のうち相手に分担を請求できるお金)や養育費をもらえるとしても,相手がすんなりと支払ってくれない場合,調停や審判を待たねばなりません。当面必要なお金の準備をしておきましょう。
 もっとも,そのお金の目途が全くないので,相手から暴力をふるわれても,家を出ていけないと諦める…そんなことあってはなりません。DVで避難して一時保護されたら,保護されている間は生活費の心配はありません(DV防止法27条)。一時保護は大体2週間程度ですが,ハローワークで就労について相談もできますし,就職先も見つからずお金も何もないということであっても,福祉事務所で母子福祉資金貸付制度を利用したり,生活保護を申請したりしてはいかがでしょうか。まずは自分(子どももいる場合は子どもについても)の安全確保を優先してください。

◎ 住宅の確保
 相手と同居しながらも離婚の協議をするケースもありますが,険悪な中で生活するのは居心地が悪いことでしょう。また,DVがある場合には,同居を続けるのは危険です。そこで,離婚協議開始前後から別居するケースがほとんどです。住居を確保する必要があります。実家に身を寄せられるか,それとも公営住宅に申し込む,あるいは民間の賃貸住宅を借りるかなど,検討してください。
 DV被害者や母子家庭であれば,公営住宅への優先入居の取扱いがなされている場合がありますので,住宅供給公社等事業主体に問い合わせてみてください。

◎ 仕事探し
 婚姻費用や養育費がもらえても,それだけでは生活できないことがほとんどです。今まで専業主婦で資格もスキルもなくても,まずは一歩踏み出すことが大切。ハローワークなどで相談や職業適性テストを受けてみてはいかがでしょう。
職業訓練,雇用保険の教育訓練費,母子家庭高等技能訓練促進費,自立支援教育訓練給付金など,職業訓練・スキルアップを図りながら給付金や手当をもらえる制度を利用できると,一石二鳥です(ただし,お住まいの都道府県・市町村によって制度がない場合もあります)。職業訓練や雇用保険の教育訓練費については,ハローワークへ,母子家庭高等技能訓練促進費については福祉事務所へ,自立支援教育訓練給付金制については,市区町村の担当課(福祉課など。役場に確認してください。)へ,相談するとよいでしょう。市区町村の福祉課には,仕事探しに他にどんな支援の制度があるかも,問い合わせてみてはいかがでしょう。

◎ 手当てなど
 児童手当,児童扶養手当など,子どもがいる場合の手当の制度も,市区町村の子育て支援の担当課に問い合わせておきましょう。
都道府県や市区町村によっては,そのほかの手当等を設けているところもありますので,調べてみましょう。たとえば,東京都では,ひとり親家庭医療費助成制度,収入の少ない世帯などに就学等に係る資金を貸し付ける生活福祉資金の制度があります。

◎ 教育費
 限られた家計で子どもの教育費がまかなえるか,心配ですね。既に述べた手当や母子福祉資金貸付金のほかにも,お住まいの地域によって,援助の制度があります。たとえば,東京都では,都立高校では授業料減免制度があります。私立の場合も入学金・授業料の一部補助制度があります。都道府県や市区町村の子育て支援の担当課に問い合わせて,利用できる制度をフルに活用してみてください。

◎ 子育て支援
 母子家庭・父子家庭は,子どもを保育所に入所させる場合に,優先的に取扱いがなされます(平成15年3月31日厚生労働省雇用均等・児童家庭局局長通知)。
また,市区町村によっては,ひとり親ホームヘルパー派遣事業を実施しているところがあります。市区町村の子育て支援の担当課に確認しておきましょう。

◎ 本を読む
 離婚に関する本を読んで手続の流れなど大体のイメージをつけておくこともいいでしょう。専門的な知識を正確にということなら,裁判官や弁護士が書いた本がいいでしょう。「難しくて歯がたたない。」と思ったら,無理して通読しなくても構いません。わからないことがあれば,法律相談に行かれたり,弁護士を代理人にたてればよいのです。
なお,この連載自体,ネット上の記事ですが(笑),ネット上必ずしも正確でない情報も見受けられますので,注意してください。

カテゴリー:打越さく良の離婚ガイド

タグ:非婚・結婚・離婚 / くらし・生活 / 弁護士 / フェミニズム,家族,離婚, 打越さく良,エッセイ,離婚ガイド,親権