2009.06.22 Mon
H:本当にインターネットの存在は大きいですよね。情報が大量に・すぐ得られる、という点もそうですし。
でも、ネットで情報を知ったり買ったりすることには落とし穴みたいなものがあって、自分の知っている範囲、興味を持っている範囲からなかなか抜け出せない、ということがあると思うんです。
たとえば本屋さんなら、その隣に並んでいる本も目につく。私のように装丁や表紙に惹かれて買うタイプなら、実際に見たり手に取ることが重要だったりするでしょうし。あと、平積みになっている本を興味本位で立ち読みしてみる、とか。お店のポップを読んで買う人も多いんじゃないでしょうか。 もちろん、オンライン書店にもさまざまな工夫があって、Amazonの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」なんて面白いですよね。「あ、この作家、こんな本も書いてたんだ!」みたいなのがあったりして。
でも、自分の知ってる場所から少し離れて、違うジャンルや作家に触れてみたいっていうとき、B-WANがやろうとしていることが、良い情報源になるんじゃないかと思うんですよ。私のイメージでは、膨大な本やマンガや映画のなかから、「もう一人の姉妹が情報を持ってきてくれる」みたいな感じですね。
O:お二人から、それぞれの本をめぐる思い出をきいて、本の話をすると、少しその人の世界観(って大げさですが)みたいなものが見えてきて、なんだか面白いですよね。
Aさんの、本=女の部分(守り)、音楽=男の部分(攻め)とかいう表現にもびっくりしますが、Hさんの「もう一人の姉妹情報を持ってきてくれる」という表現からは、兄をもつわたしとしては、とてもうらやましく思いました。
Aさんも妹がいるのですよね。親密な者が運んできてくれる情報だから、Aさんのおっしゃるように、「安心して」その本を手にすることができた、というところもあるかもしれません。
「わたしのイチオシ」が、「イチオシ」するからには、知らなかった世界に安心して飛び込めるような「イチオシ」になればいいですよね。
お二人の話を聞いて改めて、読書文化を作り上げるって、人それぞれに本の思いも違うところで、どんな可能性があるかを考えさせられました。そもそも、読書文化ってどういうものをイメージするのか、みんなばらばらですし、わたしの孤独な読書暦からは、誰かと共有するような文化がなかったのですから、じつは、あまりしっかりとしたイメージがまだありません。
でも、B-WANは、ただ本を売ることが目的だけでなく、本を通じて、読者たちが繋がること、とくに、女性たちがともに本を読むことをネットを通じて共有しながら、新たな言葉に出会ったり、本への想いを語り合ったりしながら、ちょっとした読書文化みたいなものが出来上がらないか、との期待もこめられていますよね。
読書文化というとなんだか堅苦しいですが、B-WANが大きくなるにつれて、B-WANカルチャーが育たないかな、という期待です。
本が読めること、文字を読めることって当たり前のようだけど、当たり前だからこそ、そのことがもたらしてくれる幸福がどんなものなのか、想像できないだけですよね。
ベルンハルト・シュリンク『朗読者』を読むと、本の世界への憧れが切ないくらいに伝わってきます。ちょうど今、『朗読者』を原作とした、本年度アカデミー賞主演女優賞をとったケイト・ウィンスレット主演の『愛を読むひと』が公開中ですから、映像を通じても、本を読むことの意味を深く考えさせられるのではないでしょうか?
音楽とはちがって、本は同時に一緒にひとつの本を読むってことがないですよね。『朗読者』では、朗読してくれる少年とそれを聞いている主人公は、たしかに一緒に時を共有しているのだけど、お互いまったく違う場所にいる感じがします。
ある意味、本を読むことは独りでいることで、だからこそ、人と本を介して想いを伝え合いたくなる、そんな集いの契機ができるともいえないでしょうか? 音楽だと、一緒に聞いて「オォー」とか共にのれるけど、本はそうではなくて、言葉で間接的にしか共有できない、そういうところがないですか?
A:みんなで共有するといっても、べったりと共有するわけではないんですよね。
たとえば、みんな同じ本を読んでる、もしくは読まなきゃいけない「一つ屋根の下」(笑)ではなく、「一人の読書空間」は、「自分の家」みたいなもの。でも、かといって、そのドアを開けた外には誰もいない、じゃなくて、そこには誰かがいてつながりたい時につながれる。
つながりたくなければつながらなくてもいい、そういうユルさもまた魅力になるようなサイトになれば素敵だな、と思います。
O:そういえば、今振り返ってみて思うのは、本を読んで、どんどんと自分が家族から離れていく感じ。かつて寺山修司は、『書を捨てよ、街に出よう』といったけど、確かに本を読んでいると、自分がどんどんと奥に引っ込んでいく?感じ?でも一方では、本の世界が広がると、田舎から離れてみたくなるし、そういう世界にもしかしたら触れられるかもしれないって、そんな希望を与えてくれたのはたしかです。
澁澤が大好きだったプラハには、まだいけていないけど。あの頃は、プラハに行きたい!って本気で思っていました。
Hさんがいうように、ネットでの購入はたしかに、Amazonなんかで「この商品を購入したほかの人は、こんな本も買っています」みたいな情報があるにせよ、偶然で思いもよらない本との出会いって難しいですよね。
本との出会いをいかに作るか、それもブックストアの大きな役割だと思います。新しい世界を開いてくれて、そこに招いてくれている、そんなブックストアになればいいな、と思います。
H:そうですね、実際にプラハまで行けるようなパワーをくれる、新しい世界に招いてくれるようなブックストアにB-WANがなれれば嬉しいですね。まさに、本を通して外の世界と「つなぐ、つながる」という風に。
新しい世界に招く側のB-WANの特徴は、女性の問題やジェンダーに関心のある多くの人がおすすめしているということ。それが最初にあるスタートラインで、そこから、四方八方に散らばっていくわけですよね。みんなが、ある意味てんでばらばらに好きに情報を持ってくる。
たくさんの選者がいて、たくさんの「芋づる」が発生するのがB-WAN。
たとえば、「わたしのイチオシ」は、選者の感想が書かれたコーナーですよね。ここは、メンバーが好きな本をどんどんお薦めするコーナーで、新刊も既刊もジャンルもテーマも、何も制限なし。専門書や研究書と一緒にマンガがオススメされてるという、ある意味カオスな状態で(笑)。
もちろん、そこが面白い点なので、サイトをご覧になった方が今まで興味がなかったジャンルに近づけるきっかけを作ってくれるんじゃないでしょうか。どんどん更新されるのも魅力だと思います。
あと「ゼミテキストブック」も面白いですよね。全国のジェンダー関係のゼミや演習で使われているテキストを見ることができるという画期的な試みです。
そうした場で学んでいる方にはもちろん、アカデミックな場にいない人にも、「今」のフェミニズムのムーブメントを見てもらうことができる。これから、ジェンダーや女性問題を学びたいとか、興味を持ち始めたという人にとっても有益だし。あと、進学先を決める時の情報としてもいいですし。
A:この「テキストブック」のコーナーですが、個人的にもとても嬉しい企画だと思います。というのも、自分自身がジェンダーについて、それこそ「一人で本を読む」だけでなく、どこか勉強できる場所に行きたい、と思った時、そういう場に関する情報を得るのがとても難しかったからです。
たしかに、各大学や各ゼミのサイトはありますし、入門書などに「ジェンダーやセクシュアリティの研究ができる学科一覧」みたいな情報はあったりしましたが、やっぱり、リアルに、どこでどのようなことをしてるのか、ということは口コミで知るしかなかったからです。口コミも良いのですが、やっぱり限界もあると思いました。
また、ジェンダーやフェミニズム周辺の問題って、結構「生きられた」ものであったりするから、そういう理論を扱っている生身の人間がいる場を知ることができて、それぞれつながっていけるということは、すごく意義深いことなんじゃないかと思いました。
もちろん、アカデミズム以外の場でもジェンダーについて考える場は無数にあるのですが、「どこかの大学の中で研究してる小難しいモノ」って抽象的なイメージが、ジェンダーに関する問題を曖昧にしてしまい、例えば、ジェンダーに興味ありそうな人さえとっつきにくくしてる部分があるんじゃないかな、なんて思います。
でも、そういう抽象的なイメージよりも、「こんな大学のこんな人たちがやってるモノ」というほうが生々しいですし、理論や「本の中」だけじゃなく、ジェンダーについて考える生身の姿をいろいろ見せるきっかけになるんじゃないかな、と。
H:たしかにそうですよね。私自身、現在はアカデミックな場から離れているので、どんな本が「今」なのかとても気になるし、そういう情報が得られるのはとても嬉しいです。
この企画は、まだまだ参加ゼミが少ないので、ぜひ、ゼミを担当されている大学教員の方にくわわっていただきたいですね。ゼミで読んでいる本、その情報自体が、誰かに必要な、とても重要な情報になる可能性があるわけです。
本を通して幅広い人と「つなぐ、つながる」という、B-WANの目標をかなえる大切なコーナーだと思っていますので、「ゼミテキストブック」コーナーにぜひ、みなさんご協力ください。
この「テキストブック」コーナーは、ちょっと硬い内容になりそうですが、「特集」や「パピルス」コーナーでは、「イチオシ」のような1冊だけの情報ではなく、もう少し幅が拡がったり、奥行きが増すような本の取り上げられ方がされますよね。こちらのコーナーの展開も楽しみです。
O:そうですね、「パピルス」では、本だけでなく、漫画や映画、音楽などを「つなげ」ることで、書き手の想いをエッセイ風に書いてもらおうと思っています。
田丸さんに書いていただいた記念すべき「パピルス」第一号を読んでいただければ分かるように、幼い頃読んでいた本がまた改めて出版されて、当時の自分を振り返りながら、時代を遡る形でいろいろな本を紹介してくださっています。
「新刊情報」では、women friendly な新しい本の情報をいち早くお伝えするよう心掛けたいですね。
また、わたしにはよくあることなのですが、新聞や雑誌に紹介されていたのだけど、ちょっと時間がたっていざ本を買おうとすると、「あれっ?あの本なんだっけ?」と思いだせないことってありませんか?
「書評本」のコーナーは、雑誌や新聞で書評にあがった本の情報を提供していきます。まだ、準備が整っていないので、動いていませんが、わたしと同じように、「あれっ?あの本?」という経験をお持ちの方だけでなく、どんな本が世間で読まれているのかなぁ、と、どんどん活用していってもらえるように、今後ますます充実させていこうと思います。
もちろん、B-WAN本棚にも、店員のみなさんの手によって、各種の本が揃えてあります。
たとえば、「文学」などのジャンルをちょっとのぞいていただいて、本屋を練り歩くように探索していただければ、「あ、ステキっ!」と思われる本がきっと見つかるんじゃないかな。
今はまだ、充実していませんが、本棚に並んでいる本にも、店員からのひと言をつけていきたいですね。そうしたひと言は、探索の際の道案内にもなるはずですから。とくにDVDのコーナーは、B-WANの個性がよくでている品揃えだと、店長としては自負しています。
H:あと、「リレーエッセイ」もB-WANの個性が出ていると思います。
こちらは、イチオシメンバーがエッセイを書き、そのエッセイをバトンとして次メンバーに渡す。そしてまた次のメンバーへ……という、ちょっとした連想エッセイになっています。
内容も、本だけではなく、音楽や映画・漫画と幅広くて、B-WANイチオシメンバーの興味の広さというか、関心のありようも面白いですよね。とっても個性的で、読んでいて楽しいです。
「特集」では、インタビューや、1つのテーマについて話し合うような、少し掘り下げた読み物を計画しています。
A: Hさんが紹介してくださったように、B-WANには様々なコーナーがあります。それぞれが、本をきっかけに人と人をつなぐ、またそこで何かを共有したり意見を交換したりする場であると思うんですが、様々な入り口があることで、様々な「いい関係」が生まれたらいいなと思います。
たとえば、一冊の本をきっかけにしても、「イチオシ隊」の皆さんはこんな風な読み方をしてるんだ、でも、テキストとして使ってるゼミの人たちは、こういう議論をしてるのか、自分の読み方は内容とかやり方とか、どっちに近いかなあ。でも、それに加えてこんなことも自分は思ってる、とか、いろいろ扉を開けてみたら、本の情報だけじゃなく、なんかよくわからないけど読み方や見方が広がっていく、みたい体験ができたらいいな、と私は楽しみにしています。
たとえば、ジェンダーや女性に関する本屋というと、「あなたたちの意味する『ジェンダー』や『女性』て何?」とか意地悪につっこんでくる人もいるかもしれないですが、ここでのいろんな体験それぞれが、ジェンダーに関して考えることであったり、女性について考えることであったり、というような。
H:何が出てくるんだろうとワクワクするような、あまりかしこまった情報だけではない、自由で広がりのある本との出会いをお手伝いできることが目標ですね。そして、本との出会いだけでなく、本でつながる想いを共有できる可能性も考えていきたいですね。
O:本って、とてもたくさんのジャンルがあるのに、こうしてお話をしてきて感じるのは、それぞれに本を通して大切なものを、その時々に育んできた、ということのように思います。
ブックストアB-WANの「イチオシ」や「パピルス」「特集」が、「ああ、こんな作品がこんなところにあったんだ」と、ネットを通じて集ういろいろな人に気づいていただける場になればいいですね。
最近は、ネット小説などが登場して、本からネットへ、と言われたりするけど、B-WANは、ネットから本へ、という新しい流れを作っていきたいです。
本をそっと鞄に忍ばせて、そこに自由を感じていた(今はそんなことに、自由を感じなくなっているかも。でも、それでも)、そんな気持ちを、B-WANがお届けできたらな、と思います。
B-WANは本をみなさんにお届けしますが、本でつながったみなさんによって、さらにB-WANが盛り上げてもらえるような、そんな仕組みをネットを活用しながら考えていく、新しいブックストアを目指したいですね!
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