2009.09.17 Thu
反動的とされたサッチャー政権下で進歩的な性教育が必修化した経緯を題材に、約15年間におよんだ調査をまとめたものです。
サッチャー政権下で性教育が義務必修化されましたが、その内実は労働党に近い家族計画協会が主導していた進歩的性教育を内実するものでした。本書では、この保革のねじれを手がかりに、政策がセクシュアリティの領域を対象とすることの意味を考えながら、社会のありようを読むことを課題としています。性教育が義務必修化する背景に浮かび上がるのは、近代社会が成熟する過程で経験することになる、私的領域の不安定化という問題でした。性行動や家族に関する問題が私的な問題から社会問題へと性格を変え、国家が積極的に価値的な教育に関与しながら私的領域の機能不全のメンテナンスを企図するようになる様子などが端的に見 られます。
言うまでもなく、性教育が政治の保革対立のまっただ中におかれる状況や性教育に激しい批判が向けられる動きなどは、最近の日本の 性教育やジェンダーに対する「バッシング」の動きに大きく重なっていますが、イギリスの事例からは、かなり複雑な関係図式が読みとれます。
また、自由と平等原理の浸透拡大によって、「不本意」ながら引き起こされる私的領域の不安定化という逆説的な問題は、性教育領域にとどまらずに社会の広範囲におよぶ根の深い問題でもあると思われます。
多くの方にお読み頂ければ幸いです。(広瀬裕子)
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