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DVD『痛みが美に変わる時~画家・松井冬子の世界~』
出演:松井冬子 上野千鶴子 他
(NHKエンタープライズ 2008年11月)
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松井冬子(1974~)が描くアートの世界に触れた時、
あなたのなかにある、或る気持ちに光が灯る。
痛み。怖れ。
それらは、見ること、見つめることによって変わる。
「だから言ったじゃない。見てしまえば、もう後には引けなくなるって。」
そんなささやきが聞こえる。
人は、痛みや怖れを、忘れようとして忘れられず自由を奪われ、
さらに、厚く湿った古布団から抜き取ったような綿(わた)で、心の臓の闇を覆う。
できるだけ、見ないように触れないようにと振る舞いながら、
日々の似たような、同じような出来事に怒りを感じながら、
それでいて、白日にさらけ出すような、
自己に対する壊滅的な営みなど試みることはない。
「あたし見て仰天したんですけど、もう…超絶技巧。」と、
松井さんの作品を「自傷系アート」と名づけた上野さんが興奮した表情で語る。
「ジェンダー化された痛みは、
ジェンダー化された痛みとしてきちんと受け取るべきだし、
解読すべきだと思うんですね。」と。
いったい、この人になにがあったのだろうと、
ふと、そんな気持ちが湧き上がる。
本編では明らかにはされていないのだ。
それでも、松井冬子の痛みを表現した作品が、
女性の誰しもが感じたであろう感覚を呼び覚ます。
その感覚を受け取って、しばらくは離れ難くもある。
いつしか、そこにある美しさに気づくとなぜか、ふっと口元が緩む。
美しさは、女性が持つ生き延びるチカラを源にしている。
しまい込まず露わに。表現がもたらすチカラを、つながるチカラを信じて。
■ 堀 紀美子 ■
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